シェフな夫のおうちごはん~最強スパダリ旦那さまに捕まりました~
 ハンカチの人は芦田と名乗った。
 断る理由もないので私は芦田さんの申し出を受け入れ、会社の近くの路地裏にある古風な喫茶店を訪れた。店内の内装はヨーロピアン調でアンティーク家具や古書があり、懐かしい雰囲気がする。
 メニューも昔ながらのパンケーキやグラタンやナポリタンなどどれも懐かしさにあふれている。

「こんなに素敵なお店が会社の近くにあるなんて知りませんでした」
「そう? 穂高さんはお好きだったわよ」
「え? あ、そうなんですか」

 あれ? どうして明人さんは私には教えてくれなかったんだろう?
 好きな料理やお店なら絶対おすすめしてくれると思うんだけど。

「好きなものを頼んでいいわよ。あたしのおごりだから」
「え? そんな……そういうわけにはいきません」
「いいの。あなたに迷惑をかけたんだから。きちんとお返ししないと穂高さんに申し訳ないわ」
「じゃあ、コーヒーだけごちそうになります」
「あら、遠慮しなくてもいいのに。あたしはワッフルを食べるわよ。だって穂高さんがここのワッフルが大好物だもの」

 そんなふうに言われたら食べないわけにはいかない。

「……ワッフルは自分で注文しますね」

 彼女は笑顔でメニューを眺めながらコーヒーとシンプルなバターワッフルを注文した。私はホイップクリームが添えられたワッフルを注文した。

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