TOP SECRET〜この恋は、誰にも秘密〜

take.3 繋がる〜紗綾〜


side.紗綾


昼休みを終えて戻ると、店内に客の影がなかったので来月から始まるブックフェアに関しての企画書に目を通すことにした。


今回企画を任されたブックフェアは各方面からの注目度も高く、お客さんでも楽しみにしてくれている人も多くいて遣り甲斐とプレッシャーが同じくらいある。


色々考えた結果、今回は『書店販売員たちがぶっちゃけます!なぜこんなに素敵な本が売れないのか?』フェアを企画した。


これは良作だと思って平積みしても全く手に取られずに平積みから外され、終いには返品することもある。

もやもやした気持ちを抱えながら返品するとき、何とも表現し難い切なさが湧き上がる。今回この企画を提案したとき、わかるわかるとほとんどのスタッフが賛同してくれたから、みんな同じ葛藤を抱えながら仕事をしていたのだとわかって嬉しかった。

 

企画書を読み終えてからPOPを作成していると自動ドアの開く音が聞こえて、お客さんが入ってきたことに気がついた。だいぶ背が高いのが一目でわかる。


辺りを見回しながら店内を歩きまわり目的の本を探しているように見えるけど、店の方針で『店員側からはなるべく声を掛けない』ことを掲げているから、見て見ないフリをした。


POP作りを続けているとすみません、と声を掛けられた。はいと動かしていた手を休める。顔をあげると真っ先に、男性の右の頬にある大きな火傷の痕が視界に飛び込んできた。こんなに酷い火傷の痕を見たのは初めてだ。きっと相当痛かったんだろう。


「功臣栄三郎の『頑なな子』ってありますか」


少し俯いた状態で聞いてきた男性の声は低いけれど、張りがあってよく通る声だった。こんなタイミングって、あるだろうか。功臣栄三郎の『頑なな子』は、今度のフェアで一押ししようと思っていた作品だ。あの本を知ってくれているなんて嬉しすぎる。




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