TOP SECRET〜この恋は、誰にも秘密〜
出演者たちが順番に、中が見えない仕様のブラックボックスに手を突っ込んでスポンジボールを一つずつ取る。そこに何も書いていなければハズレ。矢に射ぬかれたハートのマークが書いてあれば当たりだ。
当たりを引いたのは、人気女優の彩乃と俺だった。観客席から悲鳴のような歓声があがった。当たりを引いたお二人前へと司会者に促されて前に出る。彩乃がチラチラと俺に視線を送ってくるけど、気が付かないフリをした。
「いやあ、引いちゃいましたね~。どうですか?彩乃さん」
「そうですね…。いやだ、どうしよう。ちゃんと出来るか不安です。とても」
恥ずかしそうな表情で言いながら彩乃は再び俺を横目で見る。彩乃って共演者キラーとか色々言われてるけど、これが彼女の策なんだろう。俺には無効だよ、悪いけど。
「相馬さんはどうですか?」
「いや別に。俺、普段からくじ運とか良くないんで、もしかしたら引くかなくらいは思ってました」
「おっ!さすが冷静。クールな男と呼ばれるだけありますね~。畜生。悔しいけどやっぱカッコいいなあ~」
「はは。そういうのじゃなくて本当にくじ運悪いだけなんですよ」
「えー、でもそのルックスだから女運とか最強なんじゃないですか?」
「どうですかね。わかりませんけど」
「とまあ、軽く僕の振りを相馬さんに流されてしまったところで早速ですがいってみましょう!変装タイム~」
司会者に再び促され、スタジオ内に用意された変装コーナーのセットへ歩みを進めた。これで隣に並んでいた彩乃と距離が開いた。彼女の態度はあからさま過ぎる。あのままいけば、他で何を吹聴されるか。そもそも収録現場でプライベートな感情を見せるのは芸能人として失格だ。
女運が最強だと言われても信じられない。確かに俺が黙っていても芸能界に入る前から女の子たちが寄ってきた。
でも、その子たちが自分のルックスに惹かれて寄ってきていることはいやというほど知っている。
カッコいい。颯斗といたら自慢出来る。そんな理由ばかりだ。
もし自分が大火傷でもしたら自分を求める人間なんて誰もいなくなる。だから決して相手に本音を見せない。相手の求める王子様を上辺だけで演じ、疲れたら別れを切り出す。そんな繰り返しをずっとしてきた。
恋愛なんて打算ばかりだ。恋愛ドラマみたいな世界なんて本当のところ、きっとどこにも存在していない。