《更新中》エリアーナの結婚 ～ 落ちこぼれ地味っ子令嬢は侯爵家令息の愛され妻？！私、お飾りのはずですが…？

　入り口に近い部屋には幾つかの長椅子と小さなテーブルが置かれ、奥に店員が居座る重厚そうなカウンターがあるだけだった。おそらく代金の支払いと待合いのためだけの場所なのだろう。

　エリアーナとアレクシスが案内された先はこじんまりとした個室で、複雑な織りの絨毯の上に大きな鏡と一着のドレス、そして豪奢な猫足の長椅子が置かれている。

「旦那様はこちらでお待ちになられますように。すぐに別の者が紅茶と茶菓子をお持ち致しますわ。では奥方様、試着室に参りましょう」

　エリアーナは戸惑ってしまうが、アレクシスはお構いなしだ。
　鏡の前を通る時、ディスプレイされた一着のドレスが目に入る。繊細なレースや華奢なリボンがふんだんにあしらわれ、一目で高価なものだとわかった。
　ドレスに見入るエリアーナに気付いた店員がすかさず言う。

「奥方様はお目が高くていらっしゃいますね。そちらは社交界で流行りの意匠ですのよ。奥にお色違いもございますので、よろしければご試着を」