《更新中》エリアーナの結婚 ~ 落ちこぼれ地味っ子令嬢は侯爵家令息の愛され妻?!私、お飾りのはずですが…?
 部屋の奥のカーテンを潜れば、その先には驚くほど広い空間が広がっていた。
 ずらりと並ぶ色とりどりのドレスは圧巻で、エリアーナの他にも客らしき数人の女性が背高いハンガーに掛けられた衣装を品定めをしながら選び取っている。
 
「気になるものをピックアップくださいませ。何着でもご試着可能でございます。この部屋の奥に装飾品のディスプレイもございますが、まずはドレスに合うものをわたくしどもがお選びいたしますのでご安心を」

 エリアーナとて年頃の女性だ。煌めく宝石のようなドレスの数々を目の前にしてテンションが上がらないはずはない。
 そわり、と、胸を撫でるような高揚感が湧き上がる。

「……では、一着、試着だけ……」


 *


 誰もいなくなった部屋でアレクシスは長椅子を立ち上がり、何もない空間を見渡した。壁沿いを伝い歩き、何かしらの《《痕跡》》が無いか慎重に確かめる。

 この店が盗品を高額で売り捌き、反王政組織の資金源としているという第一報を聞かされたのは数日前のこと。国王の密偵不在のさなか、逃亡される前に一刻も早く証拠を掴めという指示を仰いだのだが——。

 ——この部屋もただの待合だ。上手く隠しているつもりだろうが、必ず尾を掴み、正体を暴く。



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