《更新中》エリアーナの結婚 ~ 落ちこぼれ地味っ子令嬢は侯爵家令息の愛され妻?!私、お飾りのはずですが…?
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軽い朝食のあと出掛ける用意を済ませて階下に降りれば、階段ホールから戸外に繋がる双扉の両側にメイドたちが五人ずつ、エリアーナを待ち構えていたように立っていた。
黒と白のお仕着せを整然と着こなし、髪を丸く後頭部に結えるさまはまるで印を押したように同じで、動かなければ石の彫像が並んでいるようだ。
「行ってらっしゃいませ、若奥様」
十人もいるというのに、頭を下げる角度や口ぶりまで揃いに揃っているなんて——機械仕掛けの人形みたいで、ちょと怖いくらい。
エリアーナの実家、辺境伯の父が構える小さな屋敷にも数名のメイドたちがいる。みんなにちゃんと個性があって、笑顔に溢れた人間らしいあたたかみがあった。
使用人たちが無機質で人間味がないのは、この由緒正しき家門であるジークベルト侯爵家に君臨する義母・ロザンヌの厳しい《《しつけ》》によるものだ。それは、結婚してからひと月もたたぬうちにエリアーナ自身が身をもって知ることになった。
近くに義母がいないことを確かめてから、向かって左側、一番手前のメイドにこっそりと耳打ちをする。義母のロザンヌはこの時間、遅めの朝食を摂っているらしかった。
「……お義母様が見ていらっしゃらない時は、お見送りをして下さらなくてもいいのよ?」
メイドは少し頭を下げただけで表情も変えず、まばたきすらしない。
「わたくしたちの仕事でございますので」
軽い朝食のあと出掛ける用意を済ませて階下に降りれば、階段ホールから戸外に繋がる双扉の両側にメイドたちが五人ずつ、エリアーナを待ち構えていたように立っていた。
黒と白のお仕着せを整然と着こなし、髪を丸く後頭部に結えるさまはまるで印を押したように同じで、動かなければ石の彫像が並んでいるようだ。
「行ってらっしゃいませ、若奥様」
十人もいるというのに、頭を下げる角度や口ぶりまで揃いに揃っているなんて——機械仕掛けの人形みたいで、ちょと怖いくらい。
エリアーナの実家、辺境伯の父が構える小さな屋敷にも数名のメイドたちがいる。みんなにちゃんと個性があって、笑顔に溢れた人間らしいあたたかみがあった。
使用人たちが無機質で人間味がないのは、この由緒正しき家門であるジークベルト侯爵家に君臨する義母・ロザンヌの厳しい《《しつけ》》によるものだ。それは、結婚してからひと月もたたぬうちにエリアーナ自身が身をもって知ることになった。
近くに義母がいないことを確かめてから、向かって左側、一番手前のメイドにこっそりと耳打ちをする。義母のロザンヌはこの時間、遅めの朝食を摂っているらしかった。
「……お義母様が見ていらっしゃらない時は、お見送りをして下さらなくてもいいのよ?」
メイドは少し頭を下げただけで表情も変えず、まばたきすらしない。
「わたくしたちの仕事でございますので」