《更新中》エリアーナの結婚 ~ 落ちこぼれ地味っ子令嬢は侯爵家令息の愛され妻?!私、お飾りのはずですが…?
 アレクシスの瞳があまりにも哀しく揺れるものだから——エリアーナは返す言葉を見失ってしまう。
 不本意でもなんでもレオンにキスされてしまったのは事実だ。

「……君は、俺の妻だ」

 繊細な指先がエリアーナの顎を持ち上げる。
 アレクシスの秀麗な面輪が大写しになり、わずかに開いた愛らしい薔薇の唇を求める。
 唇と唇が重なる寸前、アレクシスは弾かれたように失いかけた理性を取り戻した。

 緊迫がほどかれ、長い指先がすっと離れていく。
 突然に距離を詰められたことで鼓動はとどろき、愛しさと切なさに息を詰めたエリアーナの想いなど知らずに。

 ——旦那、様……っ
 
「問い詰める気も失せた。今すぐ屋敷に帰れ」

 覇気を失った声で呟いて、アレクシスはくるりと踵を返す。


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