《更新中》エリアーナの結婚 ~ 落ちこぼれ地味っ子令嬢は侯爵家令息の愛され妻?!私、お飾りのはずですが…?
「……お飾りの妻がどう言う心づもりだか知らないが。花嫁修行など学んでも無駄になるだけだろう」

 ——わかっています。
 異能の発現どころか花嫁修行すら無駄だって。
 私があなたの妻として手腕を発揮する日など、訪れはしないのだから。

「お友達もできましたし、通い始めたらすっかり楽しくなってしまって」
「……まぁいい。夫の務めを放棄した私がとやかく指図をする筋合いはない。せいぜいその講座とやらに励むのだな」

 アレクシスは少し目を細めただけで、鉄仮面のようにほとんど表情を変えないのだった。

「では、旦那様……っ、もう行かねばなりませんので……ご機嫌よう」

 夫に精一杯の作り笑いと軽いカーテシーを投げてから、逃げるようにして馬車に乗り込んだ。

 馬車の車窓からチラリと覗けば、夫の身体は早くも本邸に向いている。

 その(いさぎよ)さといったら!

 整えられた後頭部がふたたび振り向くことはなく、エリアーナと遭遇したことさえまるで無かったかのようだ。


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