《更新中》エリアーナの結婚 ~ 落ちこぼれ地味っ子令嬢は侯爵家令息の愛され妻?!私、お飾りのはずですが…?
偽りの愛に溶かされて
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髪を湿らせたままのアレクシスは、湯浴み上がりに違いなかった。そして濡れ髪なのはエリアーナも同じなのであった。
爽やかな石鹸の薫りはアレクシスのもの。
彼が好んで纏う香水とは違って、やさしく、あまい。
——旦那様、いい匂い。
エリアーナがメイド数名にさんざん傅かれ、髪に身体にと摺り込まれた香油の薔薇の香もまた、アレクシスの鼻腔をくすぐっている。
二人がけのソファに並んで腰掛けたまま、互いに言葉を発することもなく。部屋中が洋燈の薄灯りのゆらめきに沈んでいる。
俯きがちなエリアーナの目の端には、すらりと長いアレクシスの足の膝から下だけが映る……よくもこれほど長く伸びたものだと感心していると。
「何か飲む?」
組まれていた長い足がほどかれて、沈黙を破ったアレクシスが小卓に手を伸ばした。