《更新中》エリアーナの結婚 ~ 落ちこぼれ地味っ子令嬢は侯爵家令息の愛され妻?!私、お飾りのはずですが…?

偽りの愛に溶かされて


 *


 髪を湿らせたままのアレクシスは、湯浴み上がりに違いなかった。そして濡れ髪なのはエリアーナも同じなのであった。
 爽やかな石鹸の薫りはアレクシスのもの。
 彼が好んで纏う香水とは違って、やさしく、あまい。

 ——旦那様、いい匂い。

 エリアーナがメイド数名にさんざん(かしず)かれ、髪に身体にと摺り込まれた香油の薔薇の香もまた、アレクシスの鼻腔をくすぐっている。

 二人がけのソファに並んで腰掛けたまま、互いに言葉を発することもなく。部屋中が洋燈の薄灯りのゆらめきに沈んでいる。
 俯きがちなエリアーナの目の端には、すらりと長いアレクシスの足の膝から下だけが映る……よくもこれほど長く伸びたものだと感心していると。

「何か飲む?」

 組まれていた長い足がほどかれて、沈黙を破ったアレクシスが小卓に手を伸ばした。


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