《更新中》エリアーナの結婚 ~ 落ちこぼれ地味っ子令嬢は侯爵家令息の愛され妻?!私、お飾りのはずですが…?
 冷淡な夫の態度とは真逆に、アレクシスの愛犬——艶やかな黒毛のドーベルマンは主人にリードを引かれながらも名残惜しそうに目をかがやかせ、ちぎれんばかりにしっぽを振っている。

 ——ああ、マルクス。あなたは今朝も可愛いわ。

(撫《な》でて欲しかったよ!)

 頭の中に低いトーンで響くように伝わる《《感情》》は、ドーベルマンのマルクスが頭の中に訴えかけてくるものだ。

(大好きだよ、エリアーナ! 次は撫でてね……!)

 車窓ごしに振り返ると、やはりマルクスが馬車に向かってしっぽを振っている。アレクシスがそれを(たしな)めるように、リードを強く引くのが見えた。

「私もあなたが大好きよ……! マルクスっ」

 神様は、エリアーナの家系が持つ『人の嘘偽りを視読する能力』—— 『王の()』と呼ばれる——を、授けてくださらなかった。
 唯一できることと言えば、鳥や動物たちの声を聴くことだけだ。


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