《更新中》エリアーナの結婚 ~ 落ちこぼれ地味っ子令嬢は侯爵家令息の愛され妻?!私、お飾りのはずですが…?
 それでもすっかり気を落としたアレクシスをなだめるように精一杯の笑顔を向けると、目頭から熱いものがこぼれ落ちた——先に泣き出したのはエリアーナのほう。

「………………はぃ」

 こくりと小さくうなづけば、アレクシスの形の良い眉が下がり、秀麗な面輪に嬉しそうな笑みが灯った。


 砂糖菓子を喰むように優しくあまいくちづけが何度も重なる。
 長い指先で壊れ物を扱うように丁寧にふれられると、腹の奥がきゅ、と切なく疼く。
 
 なのにもっとふれてほしいと思うのは、ふしだらなのだろうか。
 エリアーナの緊張をいたわり、まるで許しを乞うように唇が喰まれる。唾液をすべてからめとられそうなほど丁寧なくちづけに翻弄されて、舌先がしびれた。

 先ほど強引に身体に刻まれたものが、優しい指先に上書きされていく——。

「愛しているよ、エリアーナ」

 心地よく紡がれる良い声に、繊細な指先に。
 身も心もとろとろに(とろ)けてしまうのは——飲みすぎてしまったワインのせい? それとも。



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