《更新中》エリアーナの結婚 ～ 落ちこぼれ地味っ子令嬢は侯爵家令息の愛され妻？！私、お飾りのはずですが…？

「旦那様」

「はかどってる？」
「はい……メイドさんたちも、時間を見つけて時々手伝ってくださっていて」

　ラフなジャケットを着こなすアレクシスは休日の装いとはいえ整然とした清潔感に溢れる。近づけば甘い香りが漂ってきそうな。
　トラウザーズを履いた長い両脚をゆっくりと運び、

「さっきそこで面白いものを見たよ」

　丸い瞳で見上げるエリアーナの隣に腰を下ろす。

「面白いもの？」
「あの気難しい《《女主人》》が」
「ふふ、ロザンヌ様ですね」
「そう。しかめ面をしながら何を見ているのかと思えば」
「ええ」
「廊下に置いてあった長椅子……茶色いやつ」
「？」
「それが苦虫を噛んだような酷い顔をして、通りがかったメイドに言うんだ」

　アレクシスがさも可笑しそうに、ははっ！　と笑った。
　その綺麗な笑顔は意外にも幼い少年のように無邪気で、つい見惚れてしまう。

「いつまでこんな古いものを置いておくつもりですか！　さっさと新しいものに変えなさい。そう、客間と同じものです。そうです、碧色の《《あれ》》です——ってね」