《更新中》エリアーナの結婚 ~ 落ちこぼれ地味っ子令嬢は侯爵家令息の愛され妻?!私、お飾りのはずですが…?
「客間と同じ、碧色の椅子……って」
「君が選んだこの椅子の事だ」
「そう……なのですか? ロザンヌ様はてっきり、家具や壁紙を元に戻されると思っていました」
長い足を組み直し、その上に肩肘を立てて顎に手を遣るアレクシスはどこか得意げに遠い目をする。
「労働改善案も徐々に良い形に仕上がっている。屋敷の改装も順調そうだな。なんだかんだ言って母上は君が選ぶものを気に入ってる。
認めているのは母上だけじゃないよ。使用人たちは勿論、ジークベルト侯爵……それに、この俺もだ」
良かったです、と微笑んで見上げると。
アレクシスの宝石のような瞳の揺らめきに釘付けになる……そして今はもう、目が合っても以前のように不機嫌そうに顔をそらされる事はない。
——ああ、いつから、こんなに優しい目を向けてくださっていたんだろう。
エリアーナに冷たくあたっていたのには理由があって、今はその理由が明かせないと言ったアレクシス。
エリアーナが気付かなかっただけで、これまでも、こんなふうに見つめられた時があったのかも知れない。
『 奥様が羨ましいって、皆んなが言ってます。あの素敵な騎士様に、すっごく愛されてますよね!』
王都の街の食堂で店員はそう言った。
あの時はそんなふうに言われた理由がわからなかったけれど、エリアーナに気づかれぬよう、そっと優しい笑顔を向けてくれていたのかも知れない。