《更新中》エリアーナの結婚 ~ 落ちこぼれ地味っ子令嬢は侯爵家令息の愛され妻?!私、お飾りのはずですが…?
「ああ、いや、何でもない」
自分はまたこの美しいものに見蕩れていた。
無防備な頬に熱がのぼるのがわかる。同時に抉られるような切なさと胸苦しさが彼の内側を支配する。
———まったく、どうしようもないな、俺は。
「アネットの、事だが」
苦し紛れに本題を切り出した。
すぐ隣を歩くエリアーナの表情は心なしか沈んで見える——その理由は考えずともわかる。先ほどまで一緒にいた学園の問題児、アネット・モローが原因なのは明白であった。
「この時間だ、生徒会長の馬車は正門を出てしまったろう。報告は明日にしよう」
「ええ……そうね。そうしましょう」
肌寒く感じるのは夕刻が近いせい。
傾きかけた太陽はいつの間にか、くすんだレモン色に姿を変えている。