《更新中》エリアーナの結婚 ~ 落ちこぼれ地味っ子令嬢は侯爵家令息の愛され妻?!私、お飾りのはずですが…?

「ああ、いや、何でもない」

 自分はまたこの美しいものに見蕩(みと)れていた。
 無防備な頬に熱がのぼるのがわかる。同時に(えぐ)られるような切なさと胸苦しさが彼の内側を支配する。

 ———まったく、どうしようもないな、俺は。

「アネットの、事だが」

 苦し紛れに本題を切り出した。
 すぐ隣を歩くエリアーナの表情は心なしか沈んで見える——その理由は考えずともわかる。先ほどまで一緒にいた学園の問題児、アネット・モローが原因なのは明白であった。

「この時間だ、生徒会長の馬車は正門を出てしまったろう。報告は明日にしよう」
「ええ……そうね。そうしましょう」

 肌寒く感じるのは夕刻が近いせい。
 傾きかけた太陽はいつの間にか、くすんだレモン色に姿を変えている。



< 210 / 227 >

この作品をシェア

pagetop