《更新中》エリアーナの結婚 ~ 落ちこぼれ地味っ子令嬢は侯爵家令息の愛され妻?!私、お飾りのはずですが…?
 火や水などの元素魔法とは異なる異能は『特異魔術』と呼ばれる。
 その多様な異能を統括する『特異魔法省』で、政治や軍事に能力を利用された挙句、命を落とした哀れな異能者たちをアレクシスは嫌というほど見てきた。
 愛するエリアーナを、彼らと同じ目にあわせるわけにはいかない。

「——いや。エリーの異能は《《発現させない》》。エリーを国王の眼になどさせるものか。これまで通り、ジークベルトの屋敷の中で俺が守り続ける」


 その時、回廊の窓の外に白い鳥が飛んだ。
 大きな羽音が耳に届いて、ふたりは揃って冴え渡る青い空を見上げた。

 エリアーナの異能は、発現しなかったのではない——アレクシスが《《発現させなかった》》のだ。

 エリアーナとの婚約を交わした、あのアコレードの日。
 アレクシスが騎士となったその日に、当時の『王の()』の異能者だったエリアーナの母親から託された言葉が眼裏(まなうら)をよぎる。


『いずれエリアーナの夫となる貴方に、幼いエリアーナ自身もまだ知らない大切な事を伝えておかねばなりません。エリアーナの母としての、最後の責務です。』


< 35 / 207 >

この作品をシェア

pagetop