勇者の子達の行く道は

出来損ないのはずの俺

「どうしてそんなふうにいわれるんだ?」

さっきよりも何倍も低い声が響いた
あまりの低さから恐怖を覚え体がピシッとなる

「どうして…?
知らないのかよ、俺が勇者の息子なのに秀でた能力が何も無いからだよ
ジープやリールに剣術や体術では一度も勝てたことがない
魔法だとしてもカーナやアリーには勝てない
何にも突出したものなんてなんも無いただただ平凡だから出来損ないなんて言われてるんだよ」

自分で話してても嫌気がさす
嫌という程アイツらとの差を確認させられるから。いくら努力しても追いつけない
持って生まれた才能に努力は勝てないんだ

「…ねぇ、ルイ本当に言ってるの?
貴方が平凡なわけないわ」

「は?何を言い出すの姉貴」

「…本当に自覚がないのか?」

「は?兄貴までどうしたんだよ」

突然おかしなことを言い出す兄貴と姉貴に首をかしげた
俺が平凡な訳がない?
自覚がない?
なんの自覚だよと心の中でツッコミを入れながら頭をうならせているとアレンがまたよく分からないことを言い出した

「ブライザー、ホープイ、ルイはお前らの本来の能力知らないからな?」

「「あ…」」

本来の能力?何言ってんだ?
そろそろ本気で3人の頭を心配しようとしてたときまたもや兄貴から爆弾が投下される

「そうだったな…まぁいいか
ルイこの際だから言う俺とホープイは本来の得意分野が逆だ」

「はい?」

理解ができない本来の得意分野?何それ
頭の中がぐるぐると回るが回るだけで理解しそうにない

「簡単に言ってしまえば私が仕事にしている治癒の能力…これは私が得意としているものね
でも実際はブライザーの方が得意なのよ
普通、重傷者3人程直せてしまえばもう重宝されるほどね。私は3人と、あと半人分ぐらいならできるわ
でもブライザーはその何倍にもなるほどの力があるのよ」

聖女それが姉貴の仕事だ。
母さんの血を色濃く継いだ姉貴はこの国2番目と呼ばれるほどの聖力の持ち主だ
それを何倍にも上回るとなれば兄貴は間違いなくこの国一番の聖力の持ち主となるはずだ
俺はそれに驚いた

「でもって、俺は剣術や体術を得意としてるだろ?これが逆ってことはそれぐらいもしくはそれ以上の技量がホープイにはあるってことだ
俺は騎士の階級だと俺はシェヴァリアだが、ホープイはグランドシェヴァリアもしくはマスター級だな」

「ひぇ…」

騎士の階級は5つある
ソルダ、エペイスト、シェヴァリア、グランドシェヴァリア、マスターだ
ソルダは剣を持てば誰でもなれる
エペイストは剣術、体術がしっかりしていて、試験に受かるとなることができる簡単に言えば下級騎士
シェヴァリアはエペイスト以上の、実力であり、オーラを使える人がなれる中級騎士のようなもの
オーラを使えるのと使えないのとでは大きく差が出るらしくこの辺りからなれる人がガクンと減っている
グランドシェヴァリアはシェヴァリア以上でありオーラを操れる人がなれる上級騎士のようなもの
最後にマスター。これはグランドシェヴァリアでは表せないと判断された人たちへの称号だ。また魔法の最高称号もマスターと言われている。

兄貴がシェヴァリアと言うだけでもすごいのに姉貴はそれ以上だと言われ姉貴が言っていたとき同様に俺は驚いて、空いた口が塞がらなかった

「これが私たちの本来の能力ね」

「ちなみに俺は頑張ればグランドシェヴァリアまではいけるらしい」

エペイスト…いや、もうほとんどシェヴァリアに近い力を持っていると言われるアレンはそう言った

…もう何があっても驚かない
そう思えてしまうほどこの短時間の情報量が多すぎた

「…それで兄貴たちの本来の力についてはわかったけどそれがどうして俺が出来損ないじゃないって言った理由になるの?」

「ルイ、女神様には全て者の能力を見ることができる力があるってのは覚えてる?」

「それは覚えてる
アカデミーの歴史でやった」

「聖女…聖力を持つ者たちは何かわかる?」

アカデミーの歴史で学ぶことばかり質問されるので姉貴たちの言いたいことがますます分からなくなる

「女神の使徒…じゃなかったっけ?」

「そう正解!そして私たちには聖力があるそれも莫大な」

「?」

「俺はその女神の能力を使えるんだ
全ての者の能力を見るってのが」

「は!?」

もう驚くことは無いと思っていたのにまた驚いてしまった

女神の能力が使える人なんて今までにいたなんて聞いたことない!!
歴史にも書物にも残されていないようなものを持った人が目の前にいる

今まで起こったことと、今の兄貴の発言でもう頭はキャパオーバー寸前だった

「俺は昔お前の能力を見たことがあった
お前はちゃんと鍛えれば剣術や体術、魔法だってあいつらに負けるなんてことがないくらいに強くなるんだ」

俺が強くなれる?あいつらよりも?

兄貴の言葉は諦めかけている俺を奮い立たせるには十分すぎた
だが、同時に衝撃を与えすぎた

その結果俺は頭がキャパオーバーしてしまいその場で倒れることになった
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