明日の恋人
音瀬くんは、優しく抱きしめてくれた。

有坂さんの気持ち分かるよ。俺もそうだったから。

え?驚いて私がそう言うと、音瀬くんは続けた。

俺さ、虐待受けてたんだ。小さい頃。
お前なんか生まれてこなければよかったのに!
さっさと、消えればいいのに!死んでしまえ!って毎日毎日言われて、殴られてた。

音瀬くんはすごく辛そうな顔をしながら言った。

その後、虐待に気づいた近所の人が警察に連絡して。それから、養護施設に行った。だから、今の俺の親は里親なんだ。養護施設にいたころ、俺なんていなければいいんだってずっと思ってた。みんな俺のことを必要としてなかったから。

でも、今は思うんだ。人は幸せになるために生まれてきてるんだって。今の親に出会って、たくさん幸せをもらったから。

そう言って音瀬くんは私の目をまっすぐ見た。

幸せになっていいんだよ。俺が幸せをあげるから。

音瀬くんはそう言って優しく微笑んだ。
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