明日の恋人
私のことは、母方の祖父母が世話してくれることになった。病院からはかなり遠くに住んでいるらしいが、3日に1度は必ず見舞いに来てくれた。

3ヶ月経って退院の日、
「星菜ちゃん、退院おめでとう」
優しい笑顔で、祖父母はそう言ってくれた。

家族が死んだ…
なのに、なんでそんなに笑っていられるの?
私はそんな風にはなれない…
何で私だけがのうのうと生きているの?…

そんなことを考えてしまうものの、私を気遣ってくれる優しい祖父母に迷惑をかけたくない、困らせたくないという思いが強くあった。

だから私は精一杯の笑みを浮かべた。

うん!ありがとう。ばあちゃん!じぃちゃん!

私はこの3ヶ月出来るだけニコニコ笑って過ごした。
そうすれば、みんな嬉しそうにするんだって、それが分かっていたから。

私にとってそうすることは、それほど辛いことではなかった。
自分の感情を殺して生きる。それは、私じゃない誰かになりきっているみたいだったから。

演じることは私の得意分野だ。だから、できる。
最初はそう言い聞かせていた。でも今はそうすることもあまりない。自分じゃない誰かでいる方が楽だし、その方がみんな幸せだと思うから。

そして私は、荷物をまとめてすぐに祖父母の家にいった。前に住んでいた場所よりももっと田舎の町、っというよりも村だった。

私は、劇団アリスを辞めた。私には、まだ続けるという強さはなかったし、家も遠くなったから丁度良い機会だったのだと思う。
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