憧れの副操縦士は、許嫁でした~社長の隠し子CAは、パイロットにすべてを捧げられる~
 いつでもどこでも一緒なわけだ。
 その気になればステイ先で寝食を共にすることだって可能なわけで……。

「ステイ先で、羽目を外し過ぎないように。私たちが結婚したことは、しばらく黙っておくつもりなんだから」
「早く俺のかわいい妻を、同僚たちに見せびらかしたいのだが……」
「航晴が不純な動機を思い描いている限り、大っぴらにするつもりはないから」
「……煩悩を捨て去るのは、簡単なことではない」
「いつも平気そうな顔をしていたじゃない。もう少しだけ頑張って」

 航晴は不満そうだったけれど、私と添い遂げた際の約束を覚えていたのだろう。
 渋々頷くと、着替えて食事にしようと促してきた。

「ルームサービスを……」
「ねぇ。ここって、本来はレストランで食事をするのでしょう? 私、行ってみたいわ」
「いいのか。ほかの宿泊客もいるが……」
「ええ。せっかくオーベルジュに宿泊したんですもの。特別なものではなくて、普通の朝食も食べてみたいわ」

 航晴は部屋で食事を取りたがっていたみたいだけれど、私の希望が通った形だ。

 わがままを言ってしまったみたいで、申し訳なかったけれど……。
 そのあとに彼から出された条件がだいぶきついものだったので、おあいこにしておきましょう。

 レストランで食事をする代わりに、航晴が私にしてもらいたいこと。
 それは――。

「ねぇ。やっぱりこのドレス……派手じゃないかしら……?」

 航晴が私のために用意したという、お揃いのドレスに身を包むことだった。

 彼は赤いネクタイに黒で統一されたスーツ。

< 100 / 139 >

この作品をシェア

pagetop