憧れの副操縦士は、許嫁でした~社長の隠し子CAは、パイロットにすべてを捧げられる~
恥ずかしいったら、ありゃしない。
そんなもの、肌見放さず持ち歩かないでほしかった。
「この写真を見た時、思ったんだ。この子を悲しませたくない。彼女がCAを目指すなら、俺も旅客機のパイロットを目指す。そう決めてから千晴と結婚するまで、あっという間だった」
一度目を閉じた航晴は、苦しそうに唇を噛み締めてから瞳を開く。
私は彼がどこか遠くに行ってしまうような気がして、慌てて手を繋ぎ合わせた。
もちろん、私たちがすでに夫婦であることは隠しておきたい秘密だから……。
繋いだ手はジャケットのポケットに無理やり押し込んでおいたけれど。
彼はこちらから手を繋いでくるとは思わず、はっと視線をこちらに向けた。
その瞳は、どんな言葉を口から出せばいいのかと迷っているようだ。
――もう、仕方ないわね。
私は彼を勇気づけるために、ある言葉を口にした。
「話してくれて、ありがとう」
「……すまない。昔語など……するものではないな」
「あら、どうして? あなたは過去のことなんて、詳細に語ろうとしないでしょう。その話を聞くまでは、早く帰りたかったのだけれど……。とても楽しい時間を過ごせたわ」
「……敵わないな……」
「そう思うなら、私から目を逸らさないで」
「もちろんだ」
私が彼との関係を隠したがっていると、知っているからでしょうね。
高校時代の写真を仕舞った航晴は、抱きしめようとした手を引っ込めた。
その代わりに、ポケットの中で繋いでいる手に力が籠もる。
離れないように、強く。
「私もあなたに倣って……過去は、振り返らないことにするわ」
片親と馬鹿にされ、貧乏生活が板についている。
金銭感覚が麻痺している航晴と結婚なんて考えられないと拒絶していたけれど。結婚式でたくさんの招待客と話をして、気づいたの。
もう、あの頃には戻れないと。
「いいのか」
「今まで意地を張って、たくさん迷惑をかけてしまったわ。ごめんなさい」
「謝罪は不要だ。無理をして、価値観を合わせようとしてなくても……」
「私はずっと、自分だけが不幸だと思っていた。卑屈になっていただけなのよ」
航晴の葛藤を知って、目が覚めた。
過去ばかりを見つめているから後ろめたくて、身動きが取れなくなってしまっていたことを。
これからは、前だけを見つめていればいい。
そんなもの、肌見放さず持ち歩かないでほしかった。
「この写真を見た時、思ったんだ。この子を悲しませたくない。彼女がCAを目指すなら、俺も旅客機のパイロットを目指す。そう決めてから千晴と結婚するまで、あっという間だった」
一度目を閉じた航晴は、苦しそうに唇を噛み締めてから瞳を開く。
私は彼がどこか遠くに行ってしまうような気がして、慌てて手を繋ぎ合わせた。
もちろん、私たちがすでに夫婦であることは隠しておきたい秘密だから……。
繋いだ手はジャケットのポケットに無理やり押し込んでおいたけれど。
彼はこちらから手を繋いでくるとは思わず、はっと視線をこちらに向けた。
その瞳は、どんな言葉を口から出せばいいのかと迷っているようだ。
――もう、仕方ないわね。
私は彼を勇気づけるために、ある言葉を口にした。
「話してくれて、ありがとう」
「……すまない。昔語など……するものではないな」
「あら、どうして? あなたは過去のことなんて、詳細に語ろうとしないでしょう。その話を聞くまでは、早く帰りたかったのだけれど……。とても楽しい時間を過ごせたわ」
「……敵わないな……」
「そう思うなら、私から目を逸らさないで」
「もちろんだ」
私が彼との関係を隠したがっていると、知っているからでしょうね。
高校時代の写真を仕舞った航晴は、抱きしめようとした手を引っ込めた。
その代わりに、ポケットの中で繋いでいる手に力が籠もる。
離れないように、強く。
「私もあなたに倣って……過去は、振り返らないことにするわ」
片親と馬鹿にされ、貧乏生活が板についている。
金銭感覚が麻痺している航晴と結婚なんて考えられないと拒絶していたけれど。結婚式でたくさんの招待客と話をして、気づいたの。
もう、あの頃には戻れないと。
「いいのか」
「今まで意地を張って、たくさん迷惑をかけてしまったわ。ごめんなさい」
「謝罪は不要だ。無理をして、価値観を合わせようとしてなくても……」
「私はずっと、自分だけが不幸だと思っていた。卑屈になっていただけなのよ」
航晴の葛藤を知って、目が覚めた。
過去ばかりを見つめているから後ろめたくて、身動きが取れなくなってしまっていたことを。
これからは、前だけを見つめていればいい。