憧れの副操縦士は、許嫁でした~社長の隠し子CAは、パイロットにすべてを捧げられる~

スタンバイとすれ違い

 航空祭から約一か月後の、十一月二十五日。

 今日は自宅で、スタンバイの日だ。

 社内で待機する場合は倉橋と雑談したり、勉強をしながら暇を潰しているけれど……。
 今回はソファーの上に座り、背中から航晴に抱きしめられた状態でニュース番組を眺めていた。

「今日は、オフじゃないのよ」
「知っている」
「だったら……」
「電話は手が届く場所に置いてある。なんの問題もないだろう」
「そうかもしれないけれど……」
「何が不満なんだ」

 ただ抱き合っているだけなら、問題ないけれど。
 これ以上先に進むようなら、絶対に駄目だと拒否しなければ。

 私は胸元に纏められた彼の手に触れると、優しい声音で諭した。

「こうやって密着していると、その先にも進みたくなるでしょう」
「いや。千晴から提示された結婚の条件は、何があっても守る」
「……結婚してすぐ、破ったくせに……」
「初夜は、特別な日だからな。ノーカウントだ」
「どう考えても、カウントするべきだと思うわよ……?」

 自分の都合がいいように結婚の条件を解釈しているようで、この先が心配だった。
 もしかして、早まったかしら……?

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