憧れの副操縦士は、許嫁でした~社長の隠し子CAは、パイロットにすべてを捧げられる~
「意外としか思えぬ反応をしているが……千晴は俺と、したいのか?」
「な……っ」

 ド直球に聞いてこないでよ。

 そりゃ、夫婦になったんですもの。
 機会があれば、愛し合うのも悪くはないと思うわよ?

 でも、肌を重ね合わせるということは、愛の結晶が生まれるかもしれない行為であることは確かで――。

「そりゃ、まぁ……。航晴は私の旦那様なわけだし……って! 何を言わせるのよ!?」
「焦っている千晴もかわいいな」
「こら! やめなさい!」
「ご褒美に、たくさん跡をつけよう。そうすれば、悪い虫が寄ってくることはないはずだ」
「指輪だけで十分よ……!」

 今日は予定していた搭乗員が急病で休むことになったり、なんらかの事情でベリーズ空港に飛行機が戻ってこれなくなった場合など呼ばれる補充要員だ。

 トラブルさえ起きなければ、このままオフとなる。

 ただ、いつ問題が起きるかわからないので、いつでも出社できるように準備を整えていなければならないのよね。

 自宅からベリーズ空港までは、車で十五分ほど。

 呼ばれた場合は三十分以内の出社が義務づけられているから、気分が盛り上がって止まらなくなる……なんて状況だけは、避けなければならなかった。

 逆に言えば、すぐに自宅を出られるような状態であれば、何をしていてもいいということだ。
 だから私たちはこうして抱き合い、のんびりとソファーの上でくつろいでいる。

「どうせ呼ばれるなら、一緒に出社したい……」
「こちらの事情でどうにかなる問題ではないのだから、仕方ないでしょう。パイロットとCAが同時に体調不良って、なかなかないわよ」
「機体トラブルが起きればいい……」
「自分たちが同じ便に乗れるよう、整備士に適当な仕事をしろって命じているようなものよね。冗談にしても、度が過ぎているわ」

 今日の航晴は、すっかりオフの溺愛モードだ。

 出社するなら私と一緒がいいと、駄々をこねている。
 フライト予定通りのスケジュールであれば、同じ便に搭乗予定だった。

 状況によっては、その予定ですらも崩れる可能性があるから嫌なんでしょうね。
 よほどのことがない限り、そうしたことは起きないはずだけれど……。
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