憧れの副操縦士は、許嫁でした~社長の隠し子CAは、パイロットにすべてを捧げられる~
9章・ツインタワーで、私達らしいクリスマス
首筋の赤い花びらは、嵐の予感
腰が痛いと漏らし、スタンバイ中のCAに迷惑をかけるわけにはいかない。
私はどうにかベッドから起き上がり、朝食を食べてから自宅をあとにしようとした。
「倉橋。申し訳ないけど、一緒に……」
「嫌でーす。お嬢様は、旦那様と一緒の車で出社してくださーい!」
「ちょっと……!」
「千晴。俺を置いて行くな」
「きゃ……っ!?」
ちょうど出社しようと思っていた倉橋を捕まえて、一緒の車に乗せてもらおうと画策したのだけれど。
後ろから追いかけてきた航晴に抱きしめられ、阻まれてしまった。
「それじゃあ、お先でーす!」
「待ちなさ……!」
「……旦那よりも、同僚を優先するのか」
「き、昨日の今日で気まずいのよ……!」
「俺は気にしていないので、問題ないな」
「あのね……!」
バタバタと両手を動かして抵抗を試みたけれど、びくともしない。
最終的に抱き上げられ、一緒の車で出社することになってしまった。
「エントランスの花だが」
「な、何によ。下手くそだって言いたいの!? 悪かったわね! うまく配置できなくて!」
「あれは俺に対する思いを込めて作られたものだと、受け取ってもいいんだな……?」
「……い、いいわよ。無理に受け取らなくても……。昨日の夜、私に言わなかったってことは、その程度ってことだろうし……」
「愛する妻が泣いていたんだ。それを無視して、花に込められた思いを打ち明けるほうがどうかしている」
「それはまぁ、そうね……」
リムジンに揺られて自宅から空港へ向かう時間は、こうした話をするのにもってこいだと感じたのでしょう。
彼の判断は、間違っていないわ。
メインに使用した五つの赤薔薇。
その意味は、あなたに出会えたことを心から喜ぶ。
面と向かって口にするのは憚れる思いも、花言葉に乗せれば伝えられる。
――でも、やっぱり恥ずかしいわ……。
視線をどこに向ければいいかすらわからず、さ迷わせていたときだった。
彼の首元に、大量の赤い花が散らされていることに気づいたのは……。
「……航晴。それ……」
私は思わず、彼の首元を指差してしまった。
思ったよりもかなり目立つその痕は、何かと女性関係に派手な噂のある阿部機長であれば軽く流されそうだけれど……。
私はどうにかベッドから起き上がり、朝食を食べてから自宅をあとにしようとした。
「倉橋。申し訳ないけど、一緒に……」
「嫌でーす。お嬢様は、旦那様と一緒の車で出社してくださーい!」
「ちょっと……!」
「千晴。俺を置いて行くな」
「きゃ……っ!?」
ちょうど出社しようと思っていた倉橋を捕まえて、一緒の車に乗せてもらおうと画策したのだけれど。
後ろから追いかけてきた航晴に抱きしめられ、阻まれてしまった。
「それじゃあ、お先でーす!」
「待ちなさ……!」
「……旦那よりも、同僚を優先するのか」
「き、昨日の今日で気まずいのよ……!」
「俺は気にしていないので、問題ないな」
「あのね……!」
バタバタと両手を動かして抵抗を試みたけれど、びくともしない。
最終的に抱き上げられ、一緒の車で出社することになってしまった。
「エントランスの花だが」
「な、何によ。下手くそだって言いたいの!? 悪かったわね! うまく配置できなくて!」
「あれは俺に対する思いを込めて作られたものだと、受け取ってもいいんだな……?」
「……い、いいわよ。無理に受け取らなくても……。昨日の夜、私に言わなかったってことは、その程度ってことだろうし……」
「愛する妻が泣いていたんだ。それを無視して、花に込められた思いを打ち明けるほうがどうかしている」
「それはまぁ、そうね……」
リムジンに揺られて自宅から空港へ向かう時間は、こうした話をするのにもってこいだと感じたのでしょう。
彼の判断は、間違っていないわ。
メインに使用した五つの赤薔薇。
その意味は、あなたに出会えたことを心から喜ぶ。
面と向かって口にするのは憚れる思いも、花言葉に乗せれば伝えられる。
――でも、やっぱり恥ずかしいわ……。
視線をどこに向ければいいかすらわからず、さ迷わせていたときだった。
彼の首元に、大量の赤い花が散らされていることに気づいたのは……。
「……航晴。それ……」
私は思わず、彼の首元を指差してしまった。
思ったよりもかなり目立つその痕は、何かと女性関係に派手な噂のある阿部機長であれば軽く流されそうだけれど……。