憧れの副操縦士は、許嫁でした~社長の隠し子CAは、パイロットにすべてを捧げられる~

「旦那の首筋に跡つけるとか、独占欲強すぎない?」
「見せびらかすような人とは思わなかったよね。ショック~」
「変な女に引っかかるくらいだったら、私と結婚してくれたらよかったのに!」

 ヒソヒソと雑談するCAを睨みつけようと視線を移せば、横からぐいっと腕を引かれる。
 倉橋は正式な発表が行われるまで、私たちの関係を大っぴらにしたくないと知っているから……。

 ここで自ら航晴の首筋に痕をつけた変な女は私だと名乗るのは、得策ではないと引き止めてくれたのだろう。

「あんなのに、心を揺れ動かす必要はないですよ」
「……そうね。ありがとう」
「お礼は、いい男の紹介でお願いしまーす」
「あなたにふさわしい男など、この世に存在するのかしら……?」

 CAとして働きながら、使用人として働く彼女の特殊な事情を受け入れてくれる男性が簡単に見つかれば、苦労はしない。

「誰かだよ相手は!」
「お答えできません」
「オレと三木の仲だろ!?」
「阿部機長より、天倉機長を尊敬していますので……」
「くそー! 今日は相手が誰か打ち明けるまで、帰さないからな!」

 私は引き攣った笑みを浮かべながら、航晴と阿部機長の会話を聞き流していた。

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