憧れの副操縦士は、許嫁でした~社長の隠し子CAは、パイロットにすべてを捧げられる~

クリスマスイブはツインタワーで

 阿部機長は航晴の妻が誰なのかを知るべく纏わりついていたけれど、絶対打ち明けないと決めた旦那様の頑固さに根負け。
 どうにか夫婦の秘密は守られることになった。

「いつまでも隠しておくわけには、いかないと思うんだ。航晴のイメージが悪くなるのは、航晴の義父としても見過ごせないよ」

 あれから約一か月後。

 十二月二十四日のクリスマスイブに、緊急家族会議が行われた。
 不眠症が完治し、お母さんとの甘いひとときを充分に堪能したお父さんは、年明けからパイロットとして現場復帰する予定だ。

『二股男』
『家の都合で大富豪の娘と結婚した』

 こうした話を吹聴されても、航晴は気にした様子がなかったけれど……。
 私の両親はまるで自分が言われたかのように、心を痛めていた。

「私たちもね、社内の心ない噂で駄目になったの」
「私がパイロットとして復帰すれば、航晴には副操縦士としてそばにいてもらう。目に余るような噂は落ち着くはずだよ」
「大吾さん……」
「このまま永遠に、航晴との関係を黙っているつもりかい」

 お父さんに問いかけられたのを、見かねたのだろう。
 隣に座る航晴は、勇気づけるように手を握った。

「いいえ」

 否定から始めた私に、視線が集中する。

 口にするべき答えは、最初から決まっていた。

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