憧れの副操縦士は、許嫁でした~社長の隠し子CAは、パイロットにすべてを捧げられる~
「これで、わかったでしょう。航晴にとっての凄い体験は、私にとっては想像もできないこと。あなたが普通や不満に思ったほうが、心の底から喜べる」
「なるほど……」

 彼は納得しているような言葉を呟いたけれど、深く考え込んでいるようだった。

 ちょうどいい機会だと考えた私は、もう少しだけ金遣いが荒い行動は控えて貰えないかと交渉する。

「プライベートジェットに乗ったほうが、私を楽しませられたんじゃないかと思ったでしょう」
「なぜ……」
「見ていればわかるわ。私は、航晴がこちらを選んでくれてよかったと思っているの」

 真正面からイルミネーションを見れなかったのに?

 無理していないかと視線で訴えかけている航晴と目を合わせた私は、とびっきりの笑顔を浮かべて答える。

「一生忘れられないクリスマスになりそうだわ。本当にありがとう!」
「……どう、いたしまして」

 どんな言葉を私にかけるか、迷っているようだったけれど……。
 優しい声音で口にした彼もまた、目元を緩ませて微笑んでいる。

 ――あなたの妻にならなければ、ツインタワーの展望台なんて一生縁がない場所だったかもしれないわ。

 なんて。
 LMM航空の娘である私が伝えたら、嫌味になるかしら?
 せっかくいい雰囲気になったのだから、ぶち壊してしまったら大変だもの。

 一瞬思い浮かべた気持ちは胸の中にしまっておこう。

 そう決めた私は、時間が許す限りイルミネーションを眺め続けた――。


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