憧れの副操縦士は、許嫁でした～社長の隠し子CAは、パイロットにすべてを捧げられる～

暗躍する陰

「また、あの女なの……!?」

　私は気づいていなかった。

　展望台の右側。

　サウスパークのピカピカと光るイルミネーションを真正面から見渡せる絶好のスペースを確保した女性が、こちらを恨みがましく見つめていたことを。

「何度目だと思っているの!?」
「三度目です、お嬢様。しかし……」
「もう我慢できないわ……！　ＬＭＭ航空の社長令嬢だから、なんなの!?　数年前は庶民だったくせに！」

　マーマレイド航空のご令嬢は、憤慨した様子を隠すことなく喚き散らす。

　その光景を目にした航晴が一緒に居た男性を一瞥すると、男は令嬢を止めようと必死に言葉を重ねている。

「お嬢様……しかし相手は……」
「わたくしを誰だと思っていますの!?　あの女が隠している秘密を、世に知らしめて差し上げますわ……！」
「や、やめましょう！　そんなことをしたら、マーマレイド航空が吹き飛んでしまいます……！」
「黙りなさい！　ちょっと脅せば、大人しくなるでしょう。ふふっ。あの女の怯えた表情を見るのが楽しみだわ……！」

　訝しげな視線を向けていた航晴に気づくことなく、マーマレイド航空のご令嬢とその付き人は、エレベーターに乗って展望台をあとにした。