憧れの副操縦士は、許嫁でした~社長の隠し子CAは、パイロットにすべてを捧げられる~
「お疲れ様でした」

 オフィスを出た私は、バスターミナルで迎えの車を待っていた。

 いつもならば、車のほうが先に到着しているはずなのに……。
 今日はなぜか、何度探しても天倉の車が見当たらない。

 ――渋滞かしら?

 こういう時は確か、航晴に連絡を取るか、倉橋と一緒に帰るのよね。
 まずは愛しの旦那様に連絡しようと、携帯を取り出したときだった。

 迎えの車がやってきたのは。
 ナンバーは天倉のもので間違いないけれど、運転している人物に見覚えがなく、訝しぶ。

 あの人、誰かしら……?

 スマートフォンに保存しておいたリストと見比べるが、やはり顔写真が掲載されていない。
 車のナンバーは合っているけど……乗っている人が異なる。

 つまり……帰宅は諦めるべきだということだ。

 航晴か、倉橋と合流しなければ。
 そう考えた一瞬の逡巡が命取りとなり、偽運転手が車から降りてくる。

「お嬢様。お迎えに上がりました」

 どうする?
< 131 / 139 >

この作品をシェア

pagetop