憧れの副操縦士は、許嫁でした~社長の隠し子CAは、パイロットにすべてを捧げられる~
「千晴……っ」
「だ、大丈夫よ……。安心して、力が抜けただけ……」
「三木副操縦士! お嬢様のこと、絶対離しちゃ駄目ですよ! 危ないですからね!」
「言われるまでもない」

 一人で立てなくなってしまった私を抱き上げた航晴は、倉橋から指摘を受けて野次馬たちを睨みつける。

 模倣犯が出てくるのではと警戒しているのでしょうね。
 観光客を先導していた男性は保安員に捕らえられているし、無謀にもこちらを狙ってくるような人々はいないと思いたかった。

「あー。これからどうする? このままこっちの送迎車に乗って帰宅すんのは……現実的じゃねぇよな」
「そうだな。信頼のおける運転手でないと……」
「俺だけこのままはいさよならってのも味気ねぇし……お前らが帰宅するのを見届けてからにするかなー」
「でも……機長の迎えはもう来てますよねー? 待たせるとスケジュールに支障が……」
「仲間外れ扱いすんじゃねぇよ。乗りかかった船だ。一から百まで、全部聞かせて貰うぞ?」
「えーっと。邪魔なので、帰ってくれます?」

 倉橋と阿部機長がバチバチと笑顔で火花を散らす。

 この二人って、仲が悪かったんだ……。
 ぼんやりと言い争う二人の様子を見守っている間に警察が来て不審な男を連行し、私たちは簡単な事情聴取を受けてから帰宅することになった。

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