憧れの副操縦士は、許嫁でした~社長の隠し子CAは、パイロットにすべてを捧げられる~
「後悔していないか」

 私が不思議そうな顔で見つめていたからでしょうね。

 彼は不安そうに問いかけてくる。
 生涯CAとして働き続けたいと豪語していた妻に、家庭を守ることを一時的とはいえ強要したことが気がかりなのだろう。

「こんなはずじゃなかったって、思うことはしょっちゅうよ」

 庶民の妻と由緒正しき家柄の夫。

 貧乏生活から一転、きらびやかな日々を送ることになってしまった私は、毎日が非日常にしか思えず――彼の好意を長い間素直に受け入れられなかった。

 今だって、心の底からこの暮らしが楽しいものだとは思えないけれど。
 心と身体を通じ合わせた航晴のことだけは、信頼しているわ。

「でもね。私は航晴の妻になれて、幸せよ」

 あなたが許嫁でよかった。

 天倉の娘として生まれ、航晴に憧れを抱いたからこそ今がある。

 私はもう、進むべき道を迷わない。
 彼と二人並んで、未来に続く一本道を歩むと誓うわ。

「……ああ。俺も千晴の夫になれたこと……光栄に思う……」
「ええ。これからも二人で、LMM航空を担うものとして、ふさわしい立ち振舞いをしましょうね」
「もちろんだ」

 私たちは未来に誓いを立てると、どちらともなく唇を触れ合わせた――。
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