憧れの副操縦士は、許嫁でした~社長の隠し子CAは、パイロットにすべてを捧げられる~
初めてのノースエリア
事態の飲み込めない私を安心させるためだろうか。
髪の毛先を優しく手櫛で梳いた彼は、カードサイズの紙が取りつけられたネックストラップを首からぶら下げてくれた。
それをじっと見つめていれば、透明なケースに入ったカードが胸元でゆらゆらと揺れていることに気づく。
私はそれを手に取り、まじまじと確認する。
「ノースエリアへ出入りするために必要な、IDカードだ。肌見放さず持ち歩くように」
「……これが……?」
IDカードには顔写真と名前、見覚えのない住所が掲載されている。
落としたら、大変なことになるのは間違いないだろう。
私は絶対紛失しないようにしようと心に誓いながら、あることに気づいて彼を見上げた。
「ねぇ。私の名字……」
「キャプテンと奥様は、夫婦になった。やはり家族は同じ名字を名乗るべきだろうと……」
「……私が天倉を名乗らないと、あなたはLMM航空の婿養子になれないものね」
お母さんと航晴は、キャプテンの味方。
私に寄り添ってくれる人は、誰もいない。
もう、小さな子どもではないのに。
髪の毛先を優しく手櫛で梳いた彼は、カードサイズの紙が取りつけられたネックストラップを首からぶら下げてくれた。
それをじっと見つめていれば、透明なケースに入ったカードが胸元でゆらゆらと揺れていることに気づく。
私はそれを手に取り、まじまじと確認する。
「ノースエリアへ出入りするために必要な、IDカードだ。肌見放さず持ち歩くように」
「……これが……?」
IDカードには顔写真と名前、見覚えのない住所が掲載されている。
落としたら、大変なことになるのは間違いないだろう。
私は絶対紛失しないようにしようと心に誓いながら、あることに気づいて彼を見上げた。
「ねぇ。私の名字……」
「キャプテンと奥様は、夫婦になった。やはり家族は同じ名字を名乗るべきだろうと……」
「……私が天倉を名乗らないと、あなたはLMM航空の婿養子になれないものね」
お母さんと航晴は、キャプテンの味方。
私に寄り添ってくれる人は、誰もいない。
もう、小さな子どもではないのに。