憧れの副操縦士は、許嫁でした~社長の隠し子CAは、パイロットにすべてを捧げられる~
「あんたの家は、もっと嫌……!」
「残念だ」

 憧れていた副操縦士は、キャプテンが決めた許嫁だった。
 そんな奴のところにノコノコ顔を出したら、襲われたって文句は言えないじゃない!

 私がドカドカと掌を丸めて胸元を叩けば、それが合図となったのだろう。
 航晴はゆっくりとエントランスに降ろしてくれる。

 やっと地に足が着いた。
 手早くハイヒールを脱ぎ捨てると、倉橋と名乗った女性に硬い声音で疑問を口にする。

「私の部屋は、どこですか」
「ご案内いたします、お嬢様」

 私を案内したいがために、天倉の間取りを事前にキャプテンから教わり把握したと言っていた航晴には悪いけれど。
 彼とずっと一緒にいたら、色んな意味で駄目になってしまう。

「また明日。お休み、千晴」
「……お、おやすみなさい……」

 別れの挨拶を済ませ、彼に背を向ける。
 部屋までの先導を買って出てくれた倉橋の背中を追いかけ、これから暮らす部屋へ向かった。
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