憧れの副操縦士は、許嫁でした~社長の隠し子CAは、パイロットにすべてを捧げられる~

憧れの副操縦士

「皆様にご案内いたします。当機はベリーズ空港に到着いたしました」

 ベリーズ空港に戻って来たことに、ほっとしている暇などない。
 機内でくつろぐお客様たちが全員この飛行機を降りるまで、彼らの安全を最優先に考えなければならないのだから。

 最後まで気を抜かず、笑顔を絶やさず丁寧に。
 よく通る声で、私は到着アナウンスを続けた。

「安全のため着用サインが消えるまで、シートベルトは着用したままでお待ちください」

 日本語のアナウンスを終えれば、全く同じ内容の英語アナウンスを行う。
 搭乗しているお客様は、日本人だけではないからだ。
 英語は苦手だったけれど、CAとして世界各国を飛び回る以上は、そんなこと言ってなどいられない。
 私は必死に勉強をして話せるようになった外国語を駆使して、どうにかアナウンスを終えた。

「お降りの際は、お忘れ物がないようにお気をつけください」

 お客様が全員外に出たことを確認したら、忘れ物や取り残された人がいないかを乗務員と共にチェックする。
 問題がないと確認が取れたら、次は報告だ。

「キャプテン、峯藤(みねふじ)です。機内チェックが完了しました」
「ああ、峯藤さん。着陸アナウンス、よかったよ」
「ありがとうございます」

 乗り遅れた乗客がいないことを報告するため、挨拶も兼ねてコックピットに顔を出す。

 機長と副操縦士は、私と会話をしながらも動作確認の手を休めることはなかった。
 この便は、すぐに乗務員や乗客を入れ替えて離陸するのだ。
 異常がないのにチェックへ長い時間をかければ、ほかの便にも影響が出てしまう。

「入社当初に比べれば、ずいぶんと英語が流暢になった」

 彼の名は三木 航晴(みき こうせい)さん。
 年齢は確か28歳。
 袖章に三本線が書かれた制服を着る副操縦士。
 鋭い切れ目と黒髪のニュアンスパーマがクールな印象を与える、真面目で誠実な男性だ。
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