憧れの副操縦士は、許嫁でした~社長の隠し子CAは、パイロットにすべてを捧げられる~
2章・2日目の方針

一夜明けて


 これから、どうやって生きていけばいいのだろう。

 朝を迎えた私は、ベッドに背中を預けてぼんやりと天井を見つめる。
 昨日はいろんなことがありすぎて、着の身着のままで寝てしまった。

 身を清めるためには、着替えが必要だ。

 ノロノロと立ち上がると、左側に備えつけられたクローゼットらしき扉へ手をかける。

「なにこれ……」

 L字型のウォークインクローゼットには、左右に分かれて洋服が収納されていた。
 右側は見覚えのある洋服たちだからいいとして。

 問題は、左側だ。

 見覚えのないパーティドレスから、きれいめワンピースまで。
 それに合わせて購入されたと思われる箱に入った靴が、整理整頓されて収納してあった。

 ――ちょっと待ってよ……。

 そりゃ、ドレスコードがあるような店にふさわしい洋服を買い揃えられる余剰金なんてないけど。
 それとこれとは、話が別だ。
 普段であれば絶対に着ない色の服まで勝手に購入されていて、頭にきた。

 まったく、冗談じゃないわ!
 着もしないドレスを勝手に用意して……! いくらすると思っているのよ!?

 朝っぱらから頭に血が登った私は、意地でも用意された服は着ないぞと固く誓い、右側のスペースからTシャツとスラックスを手に取ると、そのまま手探りでバスルームへ向かう。

「うわぁ……」

 一瞬、どうしようかと思った。

 ジャグジーつきの円形バスルームは、半露天風呂のような形になっている。
 裸で入ることなど、想定されていないのだろう。
 真正面は開放感溢れる窓から、明るい日差しが差し込む。
 高台の立地ならではの眺めを入浴しながら室内で楽しめる作りであるようだけれど、覗き対策はどうなっているのだろうか。

 とてもじゃないが、ここで身を清めようとは思えなかった。

「どうするのよ、これ……」

 私は開放感溢れる窓から緑あふれる閑静な住宅街の風景を眺めながら、辺りを見渡す。

 すると、窓の上にレールが取りつけられていることに気づいた。

 それを端まで辿ると、目隠しカーテンが取つけられていることを確認する。
 よかった。これを閉めれば、誰にも恥ずかしい姿を見られることなく身を清められそう……。

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