憧れの副操縦士は、許嫁でした~社長の隠し子CAは、パイロットにすべてを捧げられる~
「大人になってから真実が明らかになって、よかったと思うべきだとわかっているわ。ただ、いい大人の私が両親と同居するのは到底受け入れられるような話ではないの」
「……キャプテンもそれを理解しているからこそ、千晴に逃げ道を与えたのだろう」
「それがあなたとの結婚? 冗談じゃないわ。私に一体、なんのメリットがあるのよ」
「君の人生を背負う覚悟は、とうの昔に済ませている」

 覚悟や誓いを何回宣言されようが、私の気持ちは変わらない。

 一人で生きていくと決めたから。
 彼に寄りかかるわけには、いかないのだ。

 共に歩む未来を選び取るくらいだったら、敵対する道を選択したい。
 LMMの女社長になるのは私だと華々しく宣言すればいいだけの話なのに――どうしても、その言葉はうまく口にできなくて……。

「俺のことは、召使いだと思ってくれ。君と結婚する代わりに、すべてを捧げよう」

 この人はLMM航空を継ぐためならばプライドさえもかなぐり捨て私を選べる人であるらしい。

 冴えない女にすべてを捧げるなど、簡単にできるようなことではないはずなのに。
 いつか必ず、無理が祟る。

 社長の座を射止めた暁には、用済みとなって見向きもされなくなるはずだ。

 私は航晴の言葉を、信じるわけにはいかなかった。

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