憧れの副操縦士は、許嫁でした~社長の隠し子CAは、パイロットにすべてを捧げられる~
「LMMを手に入れるために、上辺だけの愛を囁き続けて尽くすと誓うなんて……虚しくないの?」
「心の底から、千晴を想っている。俺の行いで少しでも君を喜ばせられるのなら、これほど嬉しいことはない」
「……そう」

 彼に私の言葉は、残念ながら届かないようだ。

 もしも社長令嬢だと打ち明けられることがなく、純粋に彼から告白されただけだったとしたら。

 航晴の気持ちを応えられたのに――運命とは、ままならないものだ。

 このまま気持ちを受け入れた所で、私が望む対等な夫婦関係を築き上げることはできないだろう。

 だったら、この場は受け流すしかない。
 彼の好意は、聞こえず見ないふり。

「残念だけど。キャプテンのいいつけどおりに、私があなたと添い遂げる未来など訪れることはないわ」
「いや。必ず千晴は、俺のものになる。何があっても、絶対に」

 私たちはバチバチと火花を散らし、睨み合う。

 彼が本気で手籠めにしようと行動すれば、ひとたまりもないだろう。
 これから私は、必死になって嫌われる努力をしなければならない。
 憧れていた人に不快感を与えるような言動って、一体どうすればいいのよ……。
 考えるだけでもうんざりするような無理難題に頭を悩ませていることなど、悟られるわけにはいけない。

「それじゃあ、ベリが丘を案内してくださる?」
「もちろんだ。車を呼ぼう」
「結構よ」

 休憩は終わりだ。
 仕切り直した私は、彼の申し出を断り再び歩き出した。
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