憧れの副操縦士は、許嫁でした~社長の隠し子CAは、パイロットにすべてを捧げられる~
話している最中にそっぽを向くなんて、態度が悪すぎるわね。
そう考えて――自分の発言がかなり際どいものであったことに気づく。
『私としたかったの?』
この発言だけ聞くと、誤解が生まれてしまうのも無理はないけれど……心外だわ。
ショッピングモールの入口で、大人の関係になりましょうと誘うわけがないでしょう!
「ちょっと。これは、言葉通りの意味で……」
「当然だ」
誤解しないでくれと言葉を重ねれば、真剣な表情でこちらを見つめる。
その視線に尻込みしていると、彼は耳元で声のトーンを落として囁いた。
「どう受け取ってもらっても構わない。許嫁だからな。その先を期待することだって、悪いことでは……」
「悪いに決まっているでしょう……!」
なんでもかんでも、許嫁の一言で片づけないでほしいのだけれど。
キッと強く睨みつけると、彼を引き摺るようにして歩き出す。
もう。いつまで恋人繋ぎをしていなければならないのかしら。
せっかく和やかな空気だったのに、欲張ったせいで、台無しだわ!
「すまない。距離を縮めすぎたか」
「本当にね! 謝るだけで済むなら、警察など必要ないのよ!」
「千晴……」
「わかったからもう、黙って」
航晴はしょんぼりと肩を落とし、足取りがずいぶんと重くなったように見受けられる。
大きな図体をした成人男性が、手を繋いだ女性に引き摺られている光景は通行人からどんな風に映っているのだろう。
ここが一般庶民も訪れるショッピングモールでよかった。
高級店だったら今頃、噂が回っているか店員さんからの痛ましい視線を受ける羽目になっていたでしょうから。
「お詫びに洋服を……」
「いらない」
「それが気に入ったのか。レジに……」
「買わないから」
「せめて食事を……」
「施しは受けないわ!」
日常的に高級料理を嗜み舌が肥えている航晴に、庶民の味を覚えさせるわけにはいかないもの。
私になんでもしたがる彼の提案を断固として拒否し続け、行く先々で隙あればお詫びの印に奢ろうとしてくる航晴と必死に攻防戦を繰り広げていた。
ここに来てから、どれほどの時間が経っただろう。
何度断られてもゾンビのように口を動かす彼も大変だけど、それに断りを入れる私の身にもなってほしい。
こっちだって、楽ではないのよ。
彼の行為を無下にするたび、心が悲鳴をあげている。
そう考えて――自分の発言がかなり際どいものであったことに気づく。
『私としたかったの?』
この発言だけ聞くと、誤解が生まれてしまうのも無理はないけれど……心外だわ。
ショッピングモールの入口で、大人の関係になりましょうと誘うわけがないでしょう!
「ちょっと。これは、言葉通りの意味で……」
「当然だ」
誤解しないでくれと言葉を重ねれば、真剣な表情でこちらを見つめる。
その視線に尻込みしていると、彼は耳元で声のトーンを落として囁いた。
「どう受け取ってもらっても構わない。許嫁だからな。その先を期待することだって、悪いことでは……」
「悪いに決まっているでしょう……!」
なんでもかんでも、許嫁の一言で片づけないでほしいのだけれど。
キッと強く睨みつけると、彼を引き摺るようにして歩き出す。
もう。いつまで恋人繋ぎをしていなければならないのかしら。
せっかく和やかな空気だったのに、欲張ったせいで、台無しだわ!
「すまない。距離を縮めすぎたか」
「本当にね! 謝るだけで済むなら、警察など必要ないのよ!」
「千晴……」
「わかったからもう、黙って」
航晴はしょんぼりと肩を落とし、足取りがずいぶんと重くなったように見受けられる。
大きな図体をした成人男性が、手を繋いだ女性に引き摺られている光景は通行人からどんな風に映っているのだろう。
ここが一般庶民も訪れるショッピングモールでよかった。
高級店だったら今頃、噂が回っているか店員さんからの痛ましい視線を受ける羽目になっていたでしょうから。
「お詫びに洋服を……」
「いらない」
「それが気に入ったのか。レジに……」
「買わないから」
「せめて食事を……」
「施しは受けないわ!」
日常的に高級料理を嗜み舌が肥えている航晴に、庶民の味を覚えさせるわけにはいかないもの。
私になんでもしたがる彼の提案を断固として拒否し続け、行く先々で隙あればお詫びの印に奢ろうとしてくる航晴と必死に攻防戦を繰り広げていた。
ここに来てから、どれほどの時間が経っただろう。
何度断られてもゾンビのように口を動かす彼も大変だけど、それに断りを入れる私の身にもなってほしい。
こっちだって、楽ではないのよ。
彼の行為を無下にするたび、心が悲鳴をあげている。