憧れの副操縦士は、許嫁でした~社長の隠し子CAは、パイロットにすべてを捧げられる~
4章・そういう雰囲気になりかけて

両親と言い争い

「お帰りなさい」

 天倉家へ帰宅すれば、お母さんとキャプテンが肩を並べて出迎えてくれた。

 妻の腰を抱いてデレデレしてる父親と、許嫁に抱き寄せられて不機嫌そうな娘……。
 なんて対照的なのだろう。
 地獄絵図だとなんともいえない顔をしていると、航晴があの人へ頭を下げた。

「遅くまで連れ回してしまい、申し訳ございません」
「いや、いいんだよ。思ったよりも早かったね。ツインタワーで一夜を共にしてくるかと……」
「何言ってるの!?」

 許嫁同士が高級ホテルで会食をしたら、やることは一つだと当然のように語る父親をぶん殴りたくなった。
 彼が私の腰を抱いていなければ、咄嗟に手が出ていただろう。

 冗談にしても酷すぎる。
 ますますキャプテンが嫌いになった。

「サウスエリアのショッピングモールを散策していました」
「千晴がわがままを言ったのね。ごめんなさい。この子ったら……。面白くなかったでしょう?」
「いえ。お嬢様の可愛らしい姿が見れたので。俺も楽しかったです」
「まぁ。よかったわね、千晴」
「何が!?」

 お母さんは航晴とキャプテンの味方だから、本当にどうしようもない。
 三対一で、どうやって戦っていけというのよ……ありえないわ……。

「食事はまだかしら?」
「はい」
「昨日は最後まで食事を共にできなかったからね。一緒に食べよう」
「そうですね」
「ちょ、ちょっと待ってよ……! 私は一人で静かに……!」
「行こう」

 どうしてこの人たちは、私の意思を無視して勝手に決めるのよ!?

 航晴にしっかりと腰を抱かれてリビングへ連行されてしまい、強制的に両親たちと夕食を共にすることになってしまった……。

「朝、シェフが二人の話している内容を耳にしたようなんだが。鴨肉を食べたことがないんだってね」
「そうだけど、それは……」
「腕によりをかけて、千晴のために作ってくれたんだ」
「……っ!?」

 悲鳴を上げなかったことを、誰か褒めてほしい。

 鴨肉のローストを前にした私は、どうしようかと思った。
 こうして提供されてしまった以上は、口をつける以外の選択肢はないのだけれど……。

 食べたいなんて言わなかったはずなのに。
 口は災いの元とは、まさにこのことね。
 こんなことをされたら、軽々しくあれがほしいと口にできないわ……。
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