憧れの副操縦士は、許嫁でした~社長の隠し子CAは、パイロットにすべてを捧げられる~
問題はノースエリアにスーパーなんてないから、ベリが丘駅まで歩いて一時間かけて調達しにいかなければならないことくらいかしら。
「わざわざペットボトルの水一つを得るためだけに、副操縦士を頼るんですか」
「はい。運転手に車を出すよう申し出るより、頼みやすいのではないかと……」
「そのためだけに車を出してもらったり、ここに来てもらうくらいだったら自分で買いに行きます」
「……ご存知ないのですか?」
コックは本当に不思議そうな顔で、こちらを見つめてきた。
一体何事かと硬い表情で受けて立つと、申し訳無さそうに説明してくれる。
「三木様は三軒隣にお住まいですよ」
「えぇ……」
そんなこと、一言も聞いてないのだけど……。
通りで朝っぱらからリビングで出待ちができるわけだ。
スープが冷めない距離に住んでいるのなら、あの人と仲がいいのも頷ける。
「……表札とかって、出てますか」
「はい。右側に進んでいただいて三軒目のご自宅ですから、すぐにお分かりになるかと」
「ありがとうございます。もう一つだけ質問してもよろしいでしょうか」
「もちろんです」
「由緒正しい家柄の方なんでしょうか……」
「お父様は、防衛省の防衛大臣だそうですよ」
父親が政治家なのに、航空会社を継ぐために婿養子へ来たがっているなんて……。
一体どういうことなのかしら。
一般企業の社長より、政治家になるほうがよっぽど私腹を肥やせるでしょうに。
「貴重な情報提供を頂き、ありがとうございました」
「いえ。お嬢様、お気をつけて行ってらっしゃいませ」
たった三軒隣に向かうだけで、仰々しく送り出されても困るのだけれど……。
小さく会釈をした私は、コックに言われた通り天倉家を出て右側に進み、三軒隣のお宅へ向かう。
――目当ての住宅は、すぐに見つかった。
わかりやすく三木と、表札に書かれている。
我が家と同程度の住宅規模にうんざりしながら、不審者の侵入を防ぐ立派な鉄格子の横につけられたインターフォンを押した。
『はい』
「峯藤……あ、天倉ですけど……」
『千晴?』
名乗る名字を間違えてパニックになりかけていれば、あちらもカメラでこちらの姿を確認したのだろう。
私が来るなんて思っていなかったせいで、慌てているようだ。
「わざわざペットボトルの水一つを得るためだけに、副操縦士を頼るんですか」
「はい。運転手に車を出すよう申し出るより、頼みやすいのではないかと……」
「そのためだけに車を出してもらったり、ここに来てもらうくらいだったら自分で買いに行きます」
「……ご存知ないのですか?」
コックは本当に不思議そうな顔で、こちらを見つめてきた。
一体何事かと硬い表情で受けて立つと、申し訳無さそうに説明してくれる。
「三木様は三軒隣にお住まいですよ」
「えぇ……」
そんなこと、一言も聞いてないのだけど……。
通りで朝っぱらからリビングで出待ちができるわけだ。
スープが冷めない距離に住んでいるのなら、あの人と仲がいいのも頷ける。
「……表札とかって、出てますか」
「はい。右側に進んでいただいて三軒目のご自宅ですから、すぐにお分かりになるかと」
「ありがとうございます。もう一つだけ質問してもよろしいでしょうか」
「もちろんです」
「由緒正しい家柄の方なんでしょうか……」
「お父様は、防衛省の防衛大臣だそうですよ」
父親が政治家なのに、航空会社を継ぐために婿養子へ来たがっているなんて……。
一体どういうことなのかしら。
一般企業の社長より、政治家になるほうがよっぽど私腹を肥やせるでしょうに。
「貴重な情報提供を頂き、ありがとうございました」
「いえ。お嬢様、お気をつけて行ってらっしゃいませ」
たった三軒隣に向かうだけで、仰々しく送り出されても困るのだけれど……。
小さく会釈をした私は、コックに言われた通り天倉家を出て右側に進み、三軒隣のお宅へ向かう。
――目当ての住宅は、すぐに見つかった。
わかりやすく三木と、表札に書かれている。
我が家と同程度の住宅規模にうんざりしながら、不審者の侵入を防ぐ立派な鉄格子の横につけられたインターフォンを押した。
『はい』
「峯藤……あ、天倉ですけど……」
『千晴?』
名乗る名字を間違えてパニックになりかけていれば、あちらもカメラでこちらの姿を確認したのだろう。
私が来るなんて思っていなかったせいで、慌てているようだ。