憧れの副操縦士は、許嫁でした~社長の隠し子CAは、パイロットにすべてを捧げられる~
「バレるのも、時間の問題かもしれないですねぇ」
「酒のつまみにでもすればいいのよ。人を好きになる気持ちは、止められないのだから……」
「やっと認めましたか!」

 倉橋は鬼の首を取ったように歓喜の声を上げると、パチパチと手を叩いて喜んだ。
 やはり彼女も、航晴の味方であるらしい。

「あなたは私専用の使用人でしょ。主人よりも許嫁の肩を持つなんて、どうなのよ」
「お嬢様を幸せにできる男は、三木副操縦士しかいないですからね~。あたしは全力応援してるんです!」
「大きなお世話でしかないわ」
「夜空を打ち上がる花火を見ながら、ずっと隠していた気持ちを打ち明ける千晴お嬢様……! きゃーっ。ロマンティック~!」
「どんな妄想をしているのかしら、この子は……」

 肩を竦めれば、じっとしてろと喝が飛ぶ。
 腹部にぐいぐいと締めつけて帯を結び終えれば、着つけは終了だ。

 花火大会までは四時間近くあるけれど……。
 着慣れない浴衣を身に着けたまま彼のトレーニング姿を見学するのかと思ったら、なんともいえない気持ちになった。

「ベリーズホテルのスイートルームに、思いを通じ合わせた状態で宿泊なんてしたら……! やることは一つですよね!?」
「寝るだけでしょ」
「やーん。お嬢様ったら~」
「意味がわからないのだけど……」

 思いを通じ合わせた瞬間から夫婦になるわけじゃないし、即日手を出してくることはないでしょう。

 ない、わよね?

 倉橋の反応を見ていると、どうにも自分の考えに納得できない。
 大丈夫だろうかと不安になりながら送り出された私は、航晴と合流した。

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