憧れの副操縦士は、許嫁でした~社長の隠し子CAは、パイロットにすべてを捧げられる~

ホテルベリーズ・トレーニングルームにて

 浴衣女性とスポーツウェアを纏う男性がペアで歩いていたら、庶民的なホテルでは何事かと驚かれてしまいそうだけれど。

 最高級ホテルのスタッフたちは、私たちのへんてこな組み合わせを見ても笑顔で見守ってくれた。

 よくよく考えてみれば、不審者扱いされてのおかしくないわよね……。

 施設見学なんて聞こえはいいけれど、やっていることは空き巣に入る前の下見に近いようなことだし……。

「どうした。浮かない顔をしているが……自分にはふさわしくない場所だと、また尻込みしているのか」

 フレンチレストランに日本料理をメインに扱う食事処、露天風呂やリラクゼーションスペース、屋内プールなどを見学し終え、お目当てのフィットネスジムに足を踏み入れようとしたときだった。

 心配そうに、航晴が声をかけてきたのは。

 彼はいつだって、私を気にかけてくれる。
 些細な表情の変化だって見逃すことがなかった。

 心の奥底に隠している気持ちすらも、伝わっていたらよかったのに。
 そうしたら、私は……。

「いいえ。なんでもないわ。行きましょう」

 私は彼の腕を取り、入室する。

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