憧れの副操縦士は、許嫁でした~社長の隠し子CAは、パイロットにすべてを捧げられる~
 夜空にスターマインの花が咲き乱れた瞬間を狙い、航晴に話を持ちかけた。

 打ち上げ音にかき消されて聞こえなければ、それでも構わないと思っていたけれど……。
 どうやら彼の耳には、しっかりと声が届いていたらしい。

 何事かとこちらをじっと見つめた航晴と視線を合わせ、平常心と何度も自分に言い聞かせながら思いを告げる。

「……結婚してもいいわ」

 ムードや色気などへったくれもない。
 ぶっきらぼうな提案だった。

 彼は目を見開くと、嬉しそうに目元を緩ませる。
 二つ返事で了承をされる前に、こちらの思いを口にしなければ。

「ただし、条件があるわ。CAは続けたい。子どもは望んでいないから男女の営みも控えて。その条件さえ呑めれば――」
「もちろんだ。千晴の意思は、尊重する」

 彼は大きく頷くと、私の腰を自然に抱く。

 航晴にとってこの瞬間は、ずっと待ち望んでいた光景のはずだ。
 私の気が変わらぬうちに、身も心も絡め取ろうとするのは無理もない。

 ――普段であれば、拒絶していたけれど。

 おいしい料理と美しい花火を特等席で見せてくれた今日だけは、お礼に受け入れてあげるわ。

「愛している。俺の妻になってほしい」
「……喜んで。旦那様」

 美しい花が夜空に咲き乱れる、幻想的な光景を背景に――私たちはどちらともなく唇を触れ合わせ、愛を確かめあった。


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