憧れの副操縦士は、許嫁でした~社長の隠し子CAは、パイロットにすべてを捧げられる~
7章・オーベルジュではじめてを
外商と指輪
「結婚することになりました」
――花火大会終了後。
ホテルベリーズに宿泊し一夜を過ごした私たちは、昼頃にチェックアウトして天倉の家に戻ってきた。
出迎えてくれた両親にはっきりとした口調で告げた航晴は、緊張しているのだろう。視線が泳いでいる。
「まぁ……! 千晴! ついに認めたのね!」
「お母さん……ついにって、何よ……。私が悪いみたいに……」
「千晴は陽子に、そっくりだからね……」
「私は千晴ほど、頑固ではないわよ?」
キャプテンがお母さんに笑顔で語りかけると、心外とばかりに彼女が強い口調で言い放つ。
夫婦間に暗雲が立ち込めれば、あの人のほうが意見を変えるのは当然のことだ。
もう二度と、悲劇を生むことがないように。
母の意見をスルーして、私たちに提案した。
「いい機会だから、結婚指輪も選んだらどうだい?」
「素敵な提案ね。さっそく櫻坂に……」
「何言ってるの? さっき帰ってきたばかりじゃない。運転手に短い距離を送迎してもらうのは……」
「そうだな。行ったり来たりは疲れるだろう」
航晴と意見が合うことは、今までほとんどなかった。
思いを通じ合わせたからこそ、心の距離が縮まったのかもしれないと感動していれば、彼は思いがけない言葉を口にする。
「外商を呼べばいい」
「それって……」
「そうだね。そうしよう。あの店なら、私たちの安全は保証されている」
「まぁ。持ってきてくださるの?」
「ああ。店と守衛に話をつけるよ」
「ありがとうございます」
キャプテンはスマートフォンを片手に、私が止める間もなく席を外してしまった。
――車で数十分の距離を渋ったら、大変なことになったわ……。
櫻坂に店を構える一流のジュエリーショップ店員が、どうやらこれから天倉の家に出向いてくるらしい。
お母さんは顔面蒼白な娘の私よりも楽しみにしているようで、表情の変わらない航晴と歓談している。
「楽しみですね」
「ええ、本当に」
指輪を選ぶのは、お母さんではないのだけれど……。
拒否権など存在しない私は、勝手にやってくれと黙っていることしかできなかった。
――花火大会終了後。
ホテルベリーズに宿泊し一夜を過ごした私たちは、昼頃にチェックアウトして天倉の家に戻ってきた。
出迎えてくれた両親にはっきりとした口調で告げた航晴は、緊張しているのだろう。視線が泳いでいる。
「まぁ……! 千晴! ついに認めたのね!」
「お母さん……ついにって、何よ……。私が悪いみたいに……」
「千晴は陽子に、そっくりだからね……」
「私は千晴ほど、頑固ではないわよ?」
キャプテンがお母さんに笑顔で語りかけると、心外とばかりに彼女が強い口調で言い放つ。
夫婦間に暗雲が立ち込めれば、あの人のほうが意見を変えるのは当然のことだ。
もう二度と、悲劇を生むことがないように。
母の意見をスルーして、私たちに提案した。
「いい機会だから、結婚指輪も選んだらどうだい?」
「素敵な提案ね。さっそく櫻坂に……」
「何言ってるの? さっき帰ってきたばかりじゃない。運転手に短い距離を送迎してもらうのは……」
「そうだな。行ったり来たりは疲れるだろう」
航晴と意見が合うことは、今までほとんどなかった。
思いを通じ合わせたからこそ、心の距離が縮まったのかもしれないと感動していれば、彼は思いがけない言葉を口にする。
「外商を呼べばいい」
「それって……」
「そうだね。そうしよう。あの店なら、私たちの安全は保証されている」
「まぁ。持ってきてくださるの?」
「ああ。店と守衛に話をつけるよ」
「ありがとうございます」
キャプテンはスマートフォンを片手に、私が止める間もなく席を外してしまった。
――車で数十分の距離を渋ったら、大変なことになったわ……。
櫻坂に店を構える一流のジュエリーショップ店員が、どうやらこれから天倉の家に出向いてくるらしい。
お母さんは顔面蒼白な娘の私よりも楽しみにしているようで、表情の変わらない航晴と歓談している。
「楽しみですね」
「ええ、本当に」
指輪を選ぶのは、お母さんではないのだけれど……。
拒否権など存在しない私は、勝手にやってくれと黙っていることしかできなかった。