憧れの副操縦士は、許嫁でした~社長の隠し子CAは、パイロットにすべてを捧げられる~
彼は峯藤千晴ではなく、天倉千晴だから愛しているのだとずっと思い続けていたけれど――航晴の抱く思いを、真正面から受け入れてもいいのではないかと考え始めていた。
この手を取れば、私たちは夫婦だ。
「わかっているくせに」
プロポーズの答えは、花火大会の日に思いを打ち明けた時から決まっている。
差し出された四角い箱を、優しい笑みを浮かべて手に取った。
「薬指に嵌めたいのだが……いいだろうか」
「どうぞ」
許可を得た航晴は、震える手で指輪を手に取り、ゆっくりと嵌め込む。
緊張している姿など見たことがなかった私は、彼の新しい一面が見られて嬉しくなる。
「航晴も、緊張する瞬間があるのね」
「当然だろう。悪天候の操縦や、エマージェンシーが宣言された際に緊張しないパイロットなど存在しない」
「許嫁に指輪を嵌めるのは、あなたにとってはエマージェンシーコールを発令された時のような気持ちなの?」
「悪いか」
「かわいいところもあるのね」
いつも真面目そうな顔をしている割に、金遣いが荒いのは玉に瑕のように感じていたけれど……新しい一面に親しみやすさを感じ、思わず左手を伸ばして彼の頭を撫でてしまう。
拒むことはせず、気持ちよさそうに目を細めていたのが印象的だった。
「正式な発表をする前に、相手が俺であることを伝えるのは避けたいだろう。それは告げなくても構わないが――気をつけろ。誰かのものになった女ほど、手に入れたがる不届き者は多いからな」
「……不倫のお誘いを受けるかもしれないってことかしら」
「ああ。千晴は俺が見初めた、美しい女性だからな。誰かのものになったと知った男は、自分のほうがふさわしいと立候補しかねないだろう」
「LMMの娘だと露呈したあとなら、金目当ての不届き者が声をかけてくるかもしれないけれど……」
複数の男を手玉に取れるほど、魅力があるとは思えない。
杞憂だと私が告げても、航晴は安心できないみたいね。
仕事中は絶対に指輪を外すなと怖い顔で何度も厳命され、私は頷くことしかできなかった。
この手を取れば、私たちは夫婦だ。
「わかっているくせに」
プロポーズの答えは、花火大会の日に思いを打ち明けた時から決まっている。
差し出された四角い箱を、優しい笑みを浮かべて手に取った。
「薬指に嵌めたいのだが……いいだろうか」
「どうぞ」
許可を得た航晴は、震える手で指輪を手に取り、ゆっくりと嵌め込む。
緊張している姿など見たことがなかった私は、彼の新しい一面が見られて嬉しくなる。
「航晴も、緊張する瞬間があるのね」
「当然だろう。悪天候の操縦や、エマージェンシーが宣言された際に緊張しないパイロットなど存在しない」
「許嫁に指輪を嵌めるのは、あなたにとってはエマージェンシーコールを発令された時のような気持ちなの?」
「悪いか」
「かわいいところもあるのね」
いつも真面目そうな顔をしている割に、金遣いが荒いのは玉に瑕のように感じていたけれど……新しい一面に親しみやすさを感じ、思わず左手を伸ばして彼の頭を撫でてしまう。
拒むことはせず、気持ちよさそうに目を細めていたのが印象的だった。
「正式な発表をする前に、相手が俺であることを伝えるのは避けたいだろう。それは告げなくても構わないが――気をつけろ。誰かのものになった女ほど、手に入れたがる不届き者は多いからな」
「……不倫のお誘いを受けるかもしれないってことかしら」
「ああ。千晴は俺が見初めた、美しい女性だからな。誰かのものになったと知った男は、自分のほうがふさわしいと立候補しかねないだろう」
「LMMの娘だと露呈したあとなら、金目当ての不届き者が声をかけてくるかもしれないけれど……」
複数の男を手玉に取れるほど、魅力があるとは思えない。
杞憂だと私が告げても、航晴は安心できないみたいね。
仕事中は絶対に指輪を外すなと怖い顔で何度も厳命され、私は頷くことしかできなかった。