プルメリアと偽物花婿
1 出発直前の婚約破棄
『すみません。結婚、なかったことにしてください』
それはお昼の十二時半。お昼休憩で人が少なくなったオフィス。ようやく仕事を片付けて、スマホを見るとメッセージが届いていた。
頭にすんなり入ってこない文章が目に飛び込んできて、なんのドッキリかと差出人を確認する。
『山田ヨシオ』
――うん、差出人に間違いはない。私の婚約者の名前だ。次いで受信時間を確認すると10:32と表示されている。そこから着信履歴も追加のメッセージもない。
電話をかけてみるが、しばらくコールが続いた後にブツリと切れた。
『どういうことですか? 今から出発なのに冗談はやめてください』
『申し訳ないとは思っています。旅行は差し上げますから、どなたかと楽しんでください』
私からの連絡を待ちわびていたかのように返事はすぐに届いた。
「はああ?」
声が出てしまうのは許してほしい。
非情なメッセージを送ってきた主・山田ヨシオさんとこれからハワイ挙式の予定だったんだから……!
午前で仕事を終わらせて、今から空港に行こうと思っていたところ。数時間後にはフライトの時間が迫っている。
お詫びに旅行を差し上げる? どなたかと、って誰が行ってくれるって言うのよ、当日に、ハワイに!
『電話できませんか? どういうことか説明してください』
そう送ったつもりだったけど――。
「ブロックされた……」
誠実だけが取り柄です! みたいな山田さんの顔を思い出した。この男のどこか誠実なのか。私はなんて見る目がないんだろう。いやそんなことを嘆いている暇なんてない。フライトの時間は迫っているのだ。彼の会社に電話をかけてみようか。……いや、連絡が通じたところでどうなるんだ。未だに頭は真っ白だけど「結婚はなしになった」その事実だけはなぜか理解していた。
それはお昼の十二時半。お昼休憩で人が少なくなったオフィス。ようやく仕事を片付けて、スマホを見るとメッセージが届いていた。
頭にすんなり入ってこない文章が目に飛び込んできて、なんのドッキリかと差出人を確認する。
『山田ヨシオ』
――うん、差出人に間違いはない。私の婚約者の名前だ。次いで受信時間を確認すると10:32と表示されている。そこから着信履歴も追加のメッセージもない。
電話をかけてみるが、しばらくコールが続いた後にブツリと切れた。
『どういうことですか? 今から出発なのに冗談はやめてください』
『申し訳ないとは思っています。旅行は差し上げますから、どなたかと楽しんでください』
私からの連絡を待ちわびていたかのように返事はすぐに届いた。
「はああ?」
声が出てしまうのは許してほしい。
非情なメッセージを送ってきた主・山田ヨシオさんとこれからハワイ挙式の予定だったんだから……!
午前で仕事を終わらせて、今から空港に行こうと思っていたところ。数時間後にはフライトの時間が迫っている。
お詫びに旅行を差し上げる? どなたかと、って誰が行ってくれるって言うのよ、当日に、ハワイに!
『電話できませんか? どういうことか説明してください』
そう送ったつもりだったけど――。
「ブロックされた……」
誠実だけが取り柄です! みたいな山田さんの顔を思い出した。この男のどこか誠実なのか。私はなんて見る目がないんだろう。いやそんなことを嘆いている暇なんてない。フライトの時間は迫っているのだ。彼の会社に電話をかけてみようか。……いや、連絡が通じたところでどうなるんだ。未だに頭は真っ白だけど「結婚はなしになった」その事実だけはなぜか理解していた。
< 1 / 136 >