プルメリアと偽物花婿
2 立候補した新郎と初めての夜
「イズミトケッコン……」
突然の和泉の言葉に私の口から出てきたのは情けない片言だった。そんな私を見て和泉はクスクスと笑う。
「まあそれはゆっくり考えてくれたらいいですよ。俺はチャンスだと思って五日間積極的に立候補していきますけどね」
和泉は立ち上がると私の前まで移動した。私たちは先輩・後輩として、隣に立つことは多かったけれど。こうして向かい合って立ったことなどないかもしれない、しかもこんなに近く。
うつむいていると、私と和泉のスリッパは先端がぶつかった。見上げると、その背の高さに驚く。――当たり前だけど和泉は男の人だ。
「今まで意識されたことなかったからちょっと嬉しいな」
柔らかい声がおりてきて、思わず見上げると和泉は本当に嬉しそうな表情をしている。
目が合うと、和泉の手が私に伸びてきて私は反射的に目を閉じた。
「凪紗先輩」
もう一度柔らかい声が聞こえる。目を開けると、和泉は声と同じ柔らかい表情で微笑んでいた。
「俺言いましたよね? 先輩の嫌がることはしないって」
和泉は私の肩にふれると、くるりと私の身体の向きを変えた。そこには白いドレッサーがあり、私を映す。
「あ」
私の髪にプルメリアが咲いていた。さっき、ウェルカムフルーツの皿の隣に添えてあったものだろうか。ムームーにプルメリアはよく似合う。
「可愛い」
私の後ろでニコニコとしている和泉の表情も鏡に映し出される。和泉はそのまま鏡の中の私に向かって話しかける。
「俺、意識はしてほしいんですけど。先輩が怖がることは絶対にしないので安心してくださいね。本当にソファで寝ますし」
「……あの、和泉。勘違いしてたら申し訳ないんだけど。つまり、和泉は私のことが好きってこと?」
和泉の言葉をまとめると……そういうことなんだろうか。
突然の和泉の言葉に私の口から出てきたのは情けない片言だった。そんな私を見て和泉はクスクスと笑う。
「まあそれはゆっくり考えてくれたらいいですよ。俺はチャンスだと思って五日間積極的に立候補していきますけどね」
和泉は立ち上がると私の前まで移動した。私たちは先輩・後輩として、隣に立つことは多かったけれど。こうして向かい合って立ったことなどないかもしれない、しかもこんなに近く。
うつむいていると、私と和泉のスリッパは先端がぶつかった。見上げると、その背の高さに驚く。――当たり前だけど和泉は男の人だ。
「今まで意識されたことなかったからちょっと嬉しいな」
柔らかい声がおりてきて、思わず見上げると和泉は本当に嬉しそうな表情をしている。
目が合うと、和泉の手が私に伸びてきて私は反射的に目を閉じた。
「凪紗先輩」
もう一度柔らかい声が聞こえる。目を開けると、和泉は声と同じ柔らかい表情で微笑んでいた。
「俺言いましたよね? 先輩の嫌がることはしないって」
和泉は私の肩にふれると、くるりと私の身体の向きを変えた。そこには白いドレッサーがあり、私を映す。
「あ」
私の髪にプルメリアが咲いていた。さっき、ウェルカムフルーツの皿の隣に添えてあったものだろうか。ムームーにプルメリアはよく似合う。
「可愛い」
私の後ろでニコニコとしている和泉の表情も鏡に映し出される。和泉はそのまま鏡の中の私に向かって話しかける。
「俺、意識はしてほしいんですけど。先輩が怖がることは絶対にしないので安心してくださいね。本当にソファで寝ますし」
「……あの、和泉。勘違いしてたら申し訳ないんだけど。つまり、和泉は私のことが好きってこと?」
和泉の言葉をまとめると……そういうことなんだろうか。