プルメリアと偽物花婿
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「凪紗だけじゃなくて、和泉もバカなの?」
月曜日。菜帆には報告しておこうと、私たち二人は行きつけの定食屋に菜帆と向かった。
無事(仮)が取れたことを報告すると、菜帆は開口一番そう言った。デジャブだ。
「え、ちゃんと付き合うことになったけど……」
「そこじゃない。あんたら、結婚前提で付き合ったんだよね? お盆には地元に帰って挨拶もするんでしょ」
「まだ挨拶するかは……」
「はい、挨拶もしますし、近々結婚もする予定です」
私の言葉をさえぎって和泉が言った。
「じゃあ凪紗、家は出ていかないこと。わかった?」
「え?」
「菜帆さんもそう思いますよねー」
「それはそうでしょ」
菜帆は味噌汁をすすると
「山田から返してもらった百万を全部無駄にするつもり? 敷金礼金家具家電、それで一瞬で百万は溶けるよ」
私をぎろりと睨んで言った。
「まだ結婚も考えていないのに同棲するのは微妙だな……とか、ワンルームの部屋になし崩し的に住み始めたのが嫌だから、とかはわかるよ。でももういいじゃない、近い将来そこに住むんでしょ!?」
「……仰る通りでございます」
「先輩、俺と結婚する気があるんですね!?」
思わず頷いた私に和泉は喜びの声をあげる。
「それをね。謎の真面目こだわりで、自分探しの旅みたいな理由で出ていくのはやめなさい」
菜帆の言葉に和泉が小さく拍手する。
「凪紗に戻る家があるならいいよ。でもないでしょ。その百万、なんの意味があるの? そのお金、本当のハネムーンに残した方がいい」
「そうですよ、先輩。先輩が同棲というのが気になるなら、俺ルームシェアと思ってもいいですよ。家賃を払ってもらって、基本お互い自分の部屋にこもって、同居人、みたいな」
和泉はそう提案するけど、一切信用はない。
土日、四十八時間ずっとべったり隣にいたじゃない! ……その、お風呂だって一緒に入ったし、寝る時だってもちろん一緒だった。
「ふうん?」
菜帆が私をにやにやと何やら温かい目で見ている。視線が痛い。
「なるほどね。まあこの凪紗の様子を見てたら、私が言わなくても大丈夫かもね?」
「(仮)が取れたので、遠慮なくいかせてもらっております」
それでこんなにべったりしてたのか……! 金曜日までの私たちは軽くスキンシップを取ったり、キスをすることはあってもまだ同居人の関係であったと思う。遠慮がない土日だった。
「菜帆さんの言う通りですね、ハネムーン先考えましょうか」
土日からずっとニコニコしている和泉は今日も絶好調である。