プルメリアと偽物花婿
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結局七月末を迎えても、私は和泉と暮らしていた。
菜帆の現実的な理由はもっともで、百万はかなり大きい。
和泉が取り返してくれたお金を、私のこだわりで無駄に使うのは気が引けた。ハネムーン……かはともかく。また和泉と旅行に行きたいし。
理由をつけても結局のところ、私が和泉と一緒にいたかった。
本当の恋人になってひと月。会社では今まで通り先輩、後輩のまま。お互い忙しいから平日はそこまで一緒にいられない。
だけど。ただいま、と言ったらおかえりと言ってくれて。
和泉に抱きしめられながら眠る、そのあたたかさを知ってしまったら。もう知らない頃には戻れなかった。
「先輩、物件探してないですよね?」
「うん」
月末が近づいてきた頃。眠りにつく前に和泉は心配そうな声で私に訪ねた。頭にこてんと顎が添えられる。
「良かった」
順番がどうだとか、もうそれについてはどうでもよくなっていた。だってもう私が和泉のことが好きなのは百%明らかになっていたから。あれだけぐずぐず足踏みしていたけれど認めてしまえば、簡単なことだったのかもしれない。
考えるまでもなく、離れたくないし。未来を信じたくなった。
「和泉、好き」
「俺もですよ、へへ」
和泉は嬉しそうに笑うと頭に乗せていた顎をずらして、私を見つめる。私は目を閉じて、幸福を受け入れた。
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『お盆いつが都合よさそう? 舞は15.16に帰ってくるみたいだけどどうする?』
仕事を終えてお母さんからのメッセージに気づく。舞とは姉のことで、どうせなら姪っ子と甥っ子にも会いたい。
お盆に帰るなら、結婚がなくなったことを話して和泉のことを紹介する。先日までは頭を悩ませる件だったけど、今の心は軽くなっている。和泉のことを、家族に知ってほしい。今は素直にそう思う。
和泉に日付を相談して返事を返そう。和泉はきっと嬉しそうな顔で「紹介してくれることになったんですね」と言ってくれるはずだ。
この時の私は和泉と気持ちが繋がったことに浮かれていて、地元に帰り過去に直面することになるとは思っていなかった。