プルメリアと偽物花婿
「簡単に言うと山田さんとの結婚はなくなって、明日恋人が来ます!」
「……まあなんとなくわかった、ような気がする。えぇ、でもあの山田さんが? なんで?」
「元カノとヨリを戻したかったみたい」
……ヨリを戻そうとして失敗していたけど。
「へええー。人は見かけによらないんだね」
「それで……おばあちゃんには言わないで欲しいの。心配させるから」
私はリビングでテレビを見ているおばあちゃんをちらりと見ながら言う。
「まあそうだね。どっちにしろ山田さんのことは覚えてないだろうから……」
「うん。今の彼とはこのまま結婚に向かって進みたいと思ってる。彼が言ってくれたんだ、おばあちゃんのために写真撮ろうって」
「あーそうなんだ。……いい人なんだね」
詳しく説明しなくてもお母さんには伝わったようだ。あまり細かいことは気にしない家族なのはありがたい。お母さんは「お父さんにも伝えておく」と言ってくれた。お姉ちゃんにも後でメッセージを送っておこう。
――明日、和泉はまた偽物花婿になってくれる。
片付けを終えて、リビングに向かうとおばあちゃんと目が合った。
「凪紗、仕事はどう? しんどくない?」
「うん、楽しくやってるよ」
私は笑顔を作ると、九回目の返答をした。
我が家は両親、それから母方の祖母。そして姉と私の五人家族だった。祖父が早くに亡くなって、私たちが小学生の頃から祖母が我が家に移り住んだ。
おじいちゃんを亡くして寂しいのではないか、というのも理由もひとつだったけど、メインの理由は私たち姉妹の面倒を見ることだった。
両親は共働きで、おばあちゃんといる時間が一番長かった。おばあちゃんはいつもテキパキしているはっきりした人で、祖母に甘やかされたというよりは母親のように厳しく育ててもらった。
私の真面目な性格は、おばあちゃんの影響は大きいと思う。