プルメリアと偽物花婿
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二人きりになりたいのは私も同じだった。
会社でも、家でも。本当に文字通り二十四時間隣にいるのが当たり前になったら一晩離れただけでこんなに寂しくなるとは。
和泉のマンションを出て、新生活だなんて無理な話だった。
甘やかされて、抜け出せないところまできている。――少し怖いほどに。溺れたら溺れた分だけ傷つくことになるのに。
和泉に手を引かれ、エレベーターは最上階に向かった。最上階の角部屋はマンションで一番大きな部屋のようで、見た目よりずっと広かった。和泉は急くように靴を脱ぐと、一番近い部屋に私を連れ込んですぐ抱きしめた。
「はあー、我慢できなかったー」
ぎゅっと抱きしめられながら、私もこうしてほしかったのだと思うからなかなか重症だ。
薄暗い部屋の仲で抱きしめあう。一日分の体温を埋めるように。
「先輩、このあと何か予定あるんですか」
「別にないよ」
「ここ泊って行ったらどうですか」
「和泉のお母さん帰ってくるでしょ。今日は手土産とかも何も持ってきていないし、事前に約束もしていないから迷惑だよ」
「ですよねー」
はあとため息をつきながら、和泉は私の首筋に顔をうずめる。
「充電」
「ふふ」
背の高い和泉が私の肩に寄りかかる姿はなんだか可愛い。大型犬みたいだ。もしゃもしゃと頭を撫でてみる。
「そうやって子ども扱いする」
「してないよ、可愛いって思っただけ」
「してるじゃないですか」
和泉はそう言うと仕返しとばかりに私の首筋に唇を寄せる。くすぐったくて身をよじるとがっしりと抱き留められてしまう。
「い、いずみ」
「まだ時間大丈夫なんですよね」
「お母さんは?」
「今日は夕食に出掛けてますから遅くまで帰ってきませんよ」
「この部屋は?」
「俺の部屋なので問題ないです」
薄暗い部屋を見渡してみると、確かに男性っぽい部屋ではある。かなりシンプルだけど。
そんなことを考えているうちに、和泉は私を抱きしめたままベッドに座り込んだ。
その次の行動を予想してしまい、恥ずかしさから頭をまたもしゃもしゃと撫でてみるけれど、その手首は簡単に掴まれてしまう。
もう片方の大きな手が私の頭を包み込んで撫でたかと思うと、そのまま優しくベッドに移動する。
私を見下ろした和泉はもう何も言わずに、唇を近づけた。